レノボ・ジャパンは2023年12月、 ゲーミングブランド 「Legion」 よりWindows内蔵のポータブルゲーミングPC 「Legion Go」 を発売しました。
ポータブルゲーミングPC (ハンドヘルドPC) はチップセットの性能向上を背景に開発が加速していて、 Valveの 「Steam Deck」 やASUSの 「ROG Ally」 などが相次いで投入されています。
Legion Goはこの分野において後発品になりますが、 果たして十分な性能を発揮してくれるのでしょうか。 借用した実機を用いてレビューします。
Lenovo Legion Go | ||
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メーカー | Lenovo | |
発売日 | 2023年12月8日 | |
ハード | 質量 | 約854g (タブレット+コントローラー) |
サイズ | 298×40.7×131mm | |
ディスプレイ | 8.8インチ、 グレア、 タッチ液晶 | |
解像度 | 2,560×1,600 (IPS) | |
リフレッシュレート | 最大144Hz | |
バッテリー | 49.2Wh | |
充電 | 60W (USB PD) | |
インターフェース |
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ソフト | OS | Windows 11 Home 64bit |
プロセッサ | AMD Ryzen Z1 Extreme | |
GPU | AMD Radeon グラフィックス | |
メモリ | 16GB (LPDDR5X) | |
ストレージ | 512GB (PCIe NVMe/M.2) | |
Webカメラ | — | |
機能 | ネットワーク |
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センサー | ジャイロセンサー | |
カラバリ | シャドーブラック |
※ サンプル提供 : レノボ・ジャパン
キックスタンド搭載、 コントローラーは分離式
Legion Goは、 8.8インチの大型液晶を備えるハンドヘルド型のポータブルゲーミングPC。 軽量級のゲームから通常デスクトップPCで遊ぶような中量級のゲームまで、 幅広いタイトルを携帯できるのが特徴です。
着脱式のコントローラーはBluetoothマウスとしても使える設計で、 Windows 11 OSを搭載しているので通常のタブレットPCやノートPCとして使うこともできます。
他機種と比較して最大の特徴は、 コントローラーが着脱可能であること。 本体とは給電を兼ねた5極接点で接続し、 着用時はほぼ無遅延で快適にプレイできます。 外す際はコントローラー背面のつまみを押しながら下に引っ張るだけで、 Bluetooth接続でワイヤレスに動作します。
コントローラーは背面を含めてボタン類が充実しており、 幅広いゲームに対応可能な設計。 右側のコントローラーには正方形のタッチパッドが搭載されており、 付属のソール(土台)と組み合わせることでBluetoothマウスとして使用することができます。
このユニークな仕様は特にFPSゲームのプレイを想定して用意されたものですが、 通常のマウスとボタン配置や使用感が大きく異なるので、 慣れるには時間を要するでしょう。
コントローラーは左右合わせて約214g。 表面と背面に多数配置されたボタンには自身でキーを割り当てることができます。 また、 FPSに特化したモード(FPSモード)も用意されています。 たとえばFPSモード下で、 左側コントローラはY1が 「Space」 、 Y2が 「Ctrl」 、 RTが 「Shift」 、 RBが 「R」 となっており、 多くのゲームで使うキーが標準で割り当てられています。
本体サイズは298×40.7×131mmで、 「Nintendo Switch」 と比較しても一回り、 二回りは大きいサイズ感。 本機は854gと片手持ちには厳しい重量で、 両手持ちでも長時間のプレイは非現実的です。
幸い本機にはキックスタンドが付いているので、 最初は手持ちで遊んで、 途中からテーブルモードに切り替えるといった使い方もできます。
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8.8型のタッチディスプレイ
ディスプレイは8.8インチの光沢タッチ液晶で、 解像度は2560×1600ピクセル、 アスペクト比は16:10。 リフレッシュレートは最大144Hzと高速で、 FPSゲームのプレイ体験を想定しているのでしょう。
解像度は他機種に比べて高いものの、 実際にはフレームレートを保つために最低画質でプレイすることがほとんどなので、 恩恵は少なく…むしろゲーム以外の用途 (ブラウジングや動画視聴) で役立つ印象です。
最大輝度は500ニトと高めで、 明るい場所でも画面の視認性が保たれています。 またDCI−P3色域を97%カバーする色再現性の高さも魅力の一つ。 本機は光沢液晶なので、 ノングレア(非光沢)が好みの場合は別途画面保護フィルムを用意しましょう。
本機には上面と下面に1つずつUSB4 (Type-C) 端子が搭載されており、 どちらも給電と入出力が可能です。 USB4端子を介せば対応ケーブル1本で外部モニターへの映像出力が可能です。
ランチャーソフトはUIを含め優秀
プリインストールされているランチャー 「Legion Space」 は、 ゲームタイトルを一元管理できる便利なダッシュボード。 タッチ操作を想定した優秀なUIで、 ゲームを起動したり各種設定を簡単に変更することができます。
クイックメニューは右側コントローラーの 「Legion R」 ボタンを押すことで呼び出すことができ、 パフォーマンスの設定や輝度、 音量、 解像度やリフレッシュレートを変更可能です。
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ゲーム体験は比較的良好
CPUについては、 AMDの 「Ryzen Z1 Extreme」 プロセッサを採用。 「ROG Ally」 の上位モデルと共通です。
Ryzen Z1 Extreme は4nmプロセスの8コア16スレッドで、 CPUコアの 「Zen 4cアーキテクチャ」 はZen 4アーキテクチャと比較して約35%の消費電力を削減。 TDP(熱設計電力)は30Wで、 スペック上は最大5.1GHz駆動を実現します。
手に持てるサイズのポータブルPCでこのスペックは、 他機種と比較しても最高クラスと言って良いでしょう。
- CPU : AMD Ryzen Z1 Extreme
- GPU : 内蔵GPU
- メモリ : 16GB (LPDDR5X-7500)
CPU性能
… 実測値 (パフォーマンス設定 : カスタムモード リフレッシュレート : 144Hz)。 他のスコアは別のPCで計測した代表値。 SOURCE BY CINEBENCH
本機には冷却用ファンが内蔵されており、 ゲームプレイ時の排熱に寄与しています。 プレイ中は背面の通気口周りが熱くなりますが、 通常はコントローラーを握っているため気になりません。
CPU温度も平均して62〜68℃に保たれており、 TDP30Wのパワフルなプロセッサーでありながら過度に発熱しないよう動作を調整しているようです。 ファンの動作音はおおむね40dBを下回っており、 ゲーム体験を阻害するような不快感もありません。
グラフィックス性能
● ドラゴンクエストX (軽量級ゲーム) | |
設定 | 最高画質、 1,920×1,080 |
スコア | 8172 (とても快適) |
● FINAL FANTASY XIV (中量級ゲーム) | |
設定 | 高品質、 1,920×1,080 |
スコア | 8562 (快適) |
● FINAL FANTASY XV (重量級ゲーム) | |
設定 | 高品質、 1,920×1,080 |
スコア | 2705 (やや重い) |
実測値 (パフォーマンス設定 : カスタムモード リフレッシュレート : 144Hz)。 環境やパフォーマンスで値は変動する
各種ベンチマークの結果は、 軽量級ゲームの 『ドラゴンクエスト X』 が最高画質で8172(とても快適)、 中量級の 『FINAL FANTASY XIV』 は高品質で8562(快適)、 重量級の 『FINAL FANTASY XV』 は高品質で2705(やや重い)となり、 ROG Allyと比較して高い性能を示しています。
内蔵グラフィックスのため画質設定や解像度を落とす必要はあるものの、 中量級のゲームであれば本体駆動でも快適にプレイすることができます。
なおSteam対応のゲームであれば、 「リモートプレイ」 機能を利用することで高負荷なゲームを楽しむこともできます(プレイ品質は元機のスペックと通信環境に依存します)。
バッテリー容量は49.2Whと、 ハンドヘルドPCでは比較的大きめ。 FF14ベンチマーク(高品質)のループ再生では1時間18分のバッテリー駆動時間でした。 本機はUSB4 (USB PD規格) の急速充電に対応しているので、 実際は給電しながらの利用がほとんどです。
Legion Goのプレイ体験は良好で、 通常デスクトップPCで遊ぶタイトルを持ち運びできるのは大きなメリット。 一方、 『VALORANT』 のようなFPSタイトルではコントローラー入力に対応しておらず、 自分で割り当てをする手間がかかります。 Bluetooth接続のマウスやキーボードを使うこともできますが、 モビリティの利点は大きく損なわれてしまいます。
ゲームに限らず、 幅広く使える一台
Legion Goは後発機として、 従来のハンドヘルドPCに見られた弱点をカバーし、 付加価値を高めているのが特徴です。 特にタッチパネルやFPSモード、 幅広のキックスタンド、 着脱式のコントローラーなどゲーム体験に特化した仕様が他機種にはない魅力。
システムアプリの 「Legion Space」 も使いやすく、 場所を問わず様々なゲームタイトルを楽しみたい方にとっては選択肢の一つになり得る製品です。
一方で、 本体価格は134,860円 (税込、 公式ストア、 執筆時点) と高額で、 純粋にゲームを楽しみたいのであればラップトップ型のゲーミングPCや 「Steam Deck」 のような廉価機を選ぶのが得策にも思えます。
せっかくの高画質なので、 本機を選ぶならゲームだけでなく作業や動画視聴など幅広い用途で使い倒すのが良いでしょう。 サイズ感に比してスペックや排熱性能が良好なので、 ポータブルPCとしても必要十分な機能を提供してくれます。
Legion Goを購入するなら、 製品保証やサポートを受けられる公式ストアでの購入がおすすめです。 気になる方はぜひチェックしてみてください。
提供 : レノボ・ジャパン
SOURCE