Mac Catalystの恩恵を受けてついにリリースされた「Noteshelf 2」のMac版をしばらく使ってみました。
結論としては、良くも悪くもiOS・iPadOS版NoteshelfをそのままMacに持ってきた感じ。
「Noteshelfを既に使っている人」からすれば待望のMac版ということでメリットも大きいですが、「PC向けの標準ノートアプリ」としてはまだまだ改善点の多い、そんな仕上がりになっています。
「手書きノートアプリ」とPCの相性
「GoodNotes 5」や「Noteshelf 2」のようなiPadの手書きノートアプリは、従来の物理的なノートを「そのままの感覚で」デジタル化できる点に一定の評判を得ていると思うのです。
しかしそれは、タッチスクリーンを有するiPadとApple Pencilという組み合わせがあって初めて成立するものであって、キーボードに入力の大半を委ねるパソコンには通用しません。「Noteshelf for Mac」を使っていて、この問題を痛感させられました。
PC向けのノートアプリといえば、「Evernote」や「Onenote」が定番です。特にMicrosoft「Onenote」は、キーボードでの入力はもちろん、スタイラスでの書き込みも容易にできるという点で「デジタル」と「アナログ」の両側面を実現したソフト。
このようなソフトが、「Noteshelf」のようなiPadに最適化されたノートアプリがパソコンの世界に進出するための良いモデルになるのでは無いかと思うのです。
PC向けアプリとしてはアナログ寄りすぎる
以上を踏まえて「Noteshelf for Mac」を使用してみた感想です。
これは先日リリースされた「GoodNotes 5」のMac版にも言えることなんですが、どうも実際に使ってみると機能・UIが「アナログ寄り」すぎて実用性に欠ける面が多々見受けられます。
PCでの使用に最適化された「Onenote」と比較すると、PCでの使用にどうしても難がある。もちろん「iOS(iPadOS)版からそのまんまUIを移植したから」というのもありますが、もっと本質的には「手書きノートアプリ」という形態そのものがアナログ的な使い方を前提としたシステムであることが原因だと思うのです。
基本機能はiPadOS版と共通
UIはもちろん、基本的な機能についてもiPadOS版とほぼ共通。右クリックも使えなければ、ショートカットキーでのコピー&ペーストも不可。
矢印キーでのページ送りもできず、PCでのエクスペリエンスは現状使いものにならないレベル。
現状は閲覧メインのアプリ
「Noteshelf for Mac」の基本機能やUIは良くも悪くもiPadOS版とほぼ一緒。使い勝手が共通しているので慣れやすいというメリットはありますが、PCのショートカットキーが使えない、右クリックでのコピー&ペーストやノートの移動不可、矢印キーでのページ送り不可など、現状はPC側での編集作業を想定しない作りになっています。
「Noteshelf」のiPad版やiPhone版を使っているユーザーからすれば、Noteshelfで保存したファイルがPC版「Noteshelf」にも同期され閲覧できる、という魅力は確かにあります。
ところが現状それ以上のことがまともにできない状況。iPad版とは別に610円を払って購入するには、いささか魅力が足りない気もします。
「アナログ」と「デジタル」の融合を
そういうわけで、今の「Noteshelf for Mac」は、あくまでiPad向けのNoteshelfをMacでも閲覧できるようにしたもの、というスタンスで、PCでの本格的な編集作業を想定していない…というのが結論です。
ただ、もし今後「Noteshelf」のような手書きノートアプリをPC向けに本格展開するならば、根本的なシステムを変えるべきではないでしょうか。
ユーザー目線でこうした手書きノートアプリをPCでも本格的に活用するためにはどうすべきかと考えたとき、「Onenote」のようなPC向けに最適化された「デジタル」な機能性を付与するのがベストだと思うのです。
要するに、既にiPad版の「Noteshelf」は評判を得ているのだから無理に改変することはせず、Mac版はあくまでそれをベースにしつつもPCでの使い勝手に適した仕様にカスタマイズすべき、ということです。
PCに最適化された手書きノートアプリを作って欲しい
理想は「Onenote」に近いスタイル
Onenoteでは、テキスト中心でPDFや数式、図形を取り入れた高度なノートテイキングができる一方で、「手書きノートアプリ」のようなスタイラスを使った手書き注釈も可能。
Onenoteにはテキストや数式などPCでの作業に適したUXが揃っている。 IMAGE BY QUEST
一方で「Noteshelf」は…
「Noteshelf for Mac」は、手書き注釈を中心にアナログ寄りのUX・UIになっている。テキストモードもあるにはあるが、フォントの種類やサイズ、カラーなど最低限の設定しかできない。
あくまでiPadでの使い勝手をベースに開発されているため、PCで使用すると違和感がすごい。
具体的に言うと、手書きでの注釈や直感的なノート管理など「アナログチック」な部分は残した上で、ショートカットキーへの対応やテキストツールの強化(見出しや小見出し、行間設定、数式ツールなど細かい機能の追加)、注釈など「デジタル」な機能を追加してほしい。
…さすれば、「Noteshelf」をiPadとPCの両方で使う意義が見えてくるはず、そんな風に感じました。
それを抜きにしても…
上記の根本的な問題を抜きにしても、「Noteshelf」Mac版には改善して欲しい点が山ほどあります。
最たるものは、スクロール方式。「Noteshelf for Mac」はモバイル版と同様、1ページ表示の「横スクロール」にしか対応していません。
これはiPadでも気になっていた点ですが、Macで横スクロールはさすがに苦痛でした。
「GoodNotes 5」のMac版は通常の縦スクロールに対応、しかも各ページが連続で表示されるので「自分が今どのページにいるか」を一目で把握するのが容易になっています。…と言うか、アプリとして普通これくらいは用意しておくべきでしょ。
加えて、ドラッグ&ドロップによるファイルの移動にも非対応なのが痛いです。現状「Noteshelf」ではキーボードショートカットが一切使えないので、せめてもの代替として欲しかった…。これも「GoodNotes」Mac版の方は対応しています。
以上の理由から、今のところ使いやすさに関しては「GoodNotes 5 for Mac」の方に軍配です。「Noteshelf」のUI・UXは、iPadで使ってるときには気にならないんだけど、PCだと相性問題ですごくストレスに感じるものが多い。そんな印象でした。
九条ハル
ただ、Mac版の登場によってiPadとMacでノートを同期できるようになったのはユーザーにとって大きなメリットだよね!
以前はそれも叶わなかったんだものね。
メロ
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