Mac

MacBook Pro (M1 Pro、2021) を半年使うと、モデルチェンジの意味がみえてきた : 実機レビュー

アップルはラップトップにおけるデザインの解釈を拡大し、プロの製作者が本当に必要とする機能を設計した。充実したインタフェースと強力な内部性能は、新しいMacBook Proを唯一無二のマシンに特徴づける。

アップルが「MacBook Pro」の最新モデルを発表したとき、その変更点に驚いた人も多いはずだ。賛否両論を起こしたバタフライキーボードが廃止された辺りから、新たな方針に舵を切っていたのだと思う。

すなわちデザインの解釈を拡大し、プロの製作者が本当に必要とする機能を設計したのだ。SDカードやHDMIポートの復活は、MacBook Proを愛し、使い続けてきた現場のクリエイターに対するヒアリングの結果である。

このモデルに特筆されるべきは充実したインタフェース強力な内部性能だ。これらは新しい「MacBook Air」にもない特徴で、本機を選ぶ主な理由になるだろう。

PHOTOGRAPH BY KUJO HARU

14インチ MacBook Pro (M1 Pro、2021)
メーカー Apple
発売日 2021年10月
ハード 質量 約1.6kg
サイズ 1.55×31.26×22.12 (cm)
ディスプレイ 14.2インチ Liquid Retina XDR
解像度 3024×1964、254ppi
リフレッシュレート 最大120Hz可変
バッテリー 約70.0Wh
充電 最大96W 高速充電
インターフェース Thunderbolt 4 (USB 4・Display Port対応) ×3
SDXCカードスロット、HDMIポート
3.5mmヘッドホンジャック
MagSafe 3
ソフト OS macOS
SoC Apple M1 Pro
CPU : 8コア/10コア
GPU : 14コア/16コア
メモリ 16GB/32GB
ストレージ 512GB/1TB/2TB/4TB/8TB
Webカメラ 1080p FaceTime HD
機能 ネットワーク 802.11ax Wi-Fi 6
IEEE 802.11a/b/g/n/ac
センサー 指紋認証 (Touch ID)
その他 Bluetooth 5.0
カラバリ シルバー/スペースグレイ
価格 (公式サイト、執筆時点)
吊るしモデル : 274,800円 (税込)
フルカスタム : 820,800円 (税込)

堅実だが野暮ったいデザイン

新しいMacBook Proを見たとき、まず浮かんだのは「前のモデルより分厚くなったな」という感想である。ところが実際は、わずかに薄くなっているようだ。

正直、この筐体にスリムとか、スタイリッシュ、という言葉は似合わない。どんな言葉で取り繕おうと、最初の印象をくつがえすことはできないだろう。それでも、削り出しのユニボディがMacBookのアイデンティティであることに変わりはない。

PHOTOGRAPH BY KUJO HARU

旧型の13インチと比べて筐体・画面サイズが大型化した。 PHOTOGRAPH BY KUJO HARU
旧型の13インチと比べて筐体・画面サイズが大型化した。 PHOTOGRAPH BY KUJO HARU

デザインの刷新は2016年以来、実に5年ぶりだ。本体はわずかに大型化し、そのぶん画面サイズも13インチ→14インチに拡がっている。3面が狭額縁になり、iPhoneと同様のノッチ(切り欠き)が配されている。

ファーイーストガジェットの「Blackout Sticker Pro」を貼り付けている。 PHOTOGRAPH BY KUJO HARU

「TouchBar」は姿を消し、フルハイトの物理ファンクションキーが復活した。打鍵感は非常に滑らかで、その静音性に驚かされる。構造は従来のシザー式だが、キーストロークの浅い「バタフライ構造」に比べて確かな跳ね返りがあり、自然に打ちこめるのが良い。

PHOTOGRAPH BY KUJO HARU

キーボードの縦幅が増したので、トラックパッドはやや小さく設計されている。とはいえ、そこまで気にはならない。むしろ、画面のリフレッシュレートが上がったことで、トラックパッドの操作感は向上している。

キーボードの右上に配されたTouch IDセンサーは、指紋認証によるロック解除や決済を担う。この点は従来のモデルとほとんど変わらない。

PHOTOGRAPH BY KUJO HARU

精細なディスプレイ

新しいMacBook Proのディスプレイは筐体いっぱいに拡張され、丸みを帯びたデザインとなった。「ノッチ」は整容的に好ましくないが、実際に使う上で気になることは少ない。

組み込まれるウェブカメラはFace ID(顔認証)こそ非対応だが、解像度が1080pに向上した。そのために切り欠きが必要だったのなら、ノッチがあっても構わない。

ディスプレイ上部のノッチ(切り欠き)には1080pのウェブカメラが仕込まれている。 PHOTOGRAPH BY KUJO HARU

ディスプレイは、息をのむほど精細で美しい。MacBookで初めて採用されたミニLEDバックライトは、従来よりも単位モジュールを小型化することで優れた輝度とコントラストを実現している。

画面の持続輝度は従来の500ニトから最大1,000ニト(ピーク輝度は1,600ニト)になり、暗所における「黒」のコントラストが目にみえて改善している。

PHOTOGRAPH BY KUJO HARU

リフレッシュレートは、ProMotionテクノロジーの採用により最大120Hzに引き上げられた。ProMotionは内容に応じて滑らかさを自動的に調整するが、60Hz以下の固定値を設定することもできる。

一部対応しないアプリも存在するが、コンテンツの遷移やアニメーションが滑らかになることで、作業時のストレスや目の疲れを感じる機会が減った。

ただ、ProMotionがないからといって特段困ることはないし、そのためだけにMacBook Proをあえて選ぶ必要もない。リフレッシュレートでApple Pencilの使い心地が左右されるiPadとは、事情が異なっている。

インターフェース。 PHOTOGRAPH BY KUJO HARU

原点回帰のインターフェース

新しいMacBook Proにおいて「原点回帰」を象徴する点は、インターフェースにあるだろう。アップルは3つのThunderbolt 4(USB-C)ポートを残しながらも、HDMIとSDカードスロットを「復活」させたのだ。

身辺のケーブルはType-C(とLightning)に統べられてしまったが、モニターの環境に依存する外部接続ではHDMIが欠かせない。

PHOTOGRAPH BY KUJO HARU

SDカードだって、撮影と写真編集をルーチンとするボクの生活には必要だ。「挿したカードがはみ出すのは美しくない」と考えるフィル・シラーのような人は、少し金を払ってMacBook専用のSDカードを手に入れればいい。

マグネット式の充電システム「MagSafe」も第三世代として帰ってきた。ケーブルに足を引っ掛けてしまうほど乱雑な職場でも、パソコンごと机から落とすことはないだろう。

すべてを許容できる性能

今回のMacBook Proには、自社開発のSoC(システム・オン・チップ)である「M1」をさらに進化させた「M1 Pro」「M1 Max」のいずれかが搭載されている。

M1 Proチップのクラス
・ 8コアCPU/14コアGPU
・ 10コアCPU/14コアGPU
・ 10コアCPU/16コアGPU

レビューに使用したのはM1 Proで、8コアCPU14コアGPU32GBのユニファイドメモリを備えたモデル。より性能の高いM1 Maxにカスタマイズすることもできる。

PHOTOGRAPH BY KUJO HARU

実際のところ、日常的な作業のほとんどにおいてM1やM2チップとの差を感じることはない。具体的にM1 Proのパワーが活かされるのは、4K画質の映像を編集したり、Blenderで3Dオブジェクトのレンダリングを行うときだ。

M1チップにおいて最大のネックとされていた外部出力の制限はいくらか緩和され、M1 Proでは最大2台の外部ディスプレイに出力できるようになった(M1 Maxは3台まで)。新型MacBook Airに搭載されたM2チップは、あいかわらず1台までの出力にとどまっている。

         M1 M1 Pro M1 Max
CPUコア 高性能4 + 高効率4 高性能6 + 高効率2
高性能8 + 高効率2
高性能8 + 高効率2
GPUコア 8コアGPU 14コアGPU
16コアGPU
24コアGPU
32コアGPU
NPU 16コア Neural Engine
RAM 8・16GB ユニファイドメモリ
68.2GB/s
16・32GB ユニファイドメモリ
200GB/s
32・64GB ユニファイドメモリ
400GB/s
メディア
エンジン
ハードウェアアクセラレーテッドH.264
HEVC、ProRes、ProRes RAW
ビデオエンコード/デコードエンジン
ProResエンコード/デコードエンジン
(M1 Proは1コア、M1 Maxは2コア搭載)
トランジスタ 160億個 337億個 570億個
M1チップのスペック比較。メモリの転送速度に注目したい。 SOURCE BY APPLE
GeekBench 5 (Single-Core)
MBP 2021
(M1 Pro)

1668

MBA 2022
(M2)

1926

MBP 2020
(M1)

1660

MBP 2018
(8th Core i7)

962

GeekBench 5 (Multi-Core)
MBP 2021
(M1 Pro)

9540

MBA 2022
(M2)

8769

MBP 2020
(M1)

7290

MBP 2018
(8th Core i7)

3301

基準値

実測値。 M1 Pro : 8コアCPU/14コアGPU。 M2 : 8コアCPU/8コアGPU。 環境やパフォーマンスで値は変動する

統合型のシステムにより電力消費が抑えられたぶん、バッテリーのもちは良くなっている。使用条件によってばらつきはあるが、輝度50%でブラウジングや執筆など通常の使い方をするなら、おおよそ10時間はもつ印象だ。

MacBook Proを注文するなら、67WのUSB-C電源アダプタを併せて使うのがいい。これなら30分で40%の急速充電ができる。オプションの96Wアダプタは30分で50%の急速充電ができるが、サイズに比してその差は大きくない。

新しいMacBook Proの筐体は排熱効率を意識した設計になっている。 PHOTOGRAPH BY KUJO HARU

デザインの解釈が問われる一台

MacBook Proはプロ向けラップトップの定番機として、登場以来その地位を保ち続けてきた。与えられた5年ぶりのアップデートは、ユーザーの期待に十分応え得る内容といえるだろう。

筐体は機能性と排熱性能を重視した設計に改められ、より重く(約1.4kg→1.6kg)、ボッテリした外観になった。これらは間違いなく「代償」となる一方で、プロダクトデザインとして総合的にみるならば、一概に否定することもない。

要するに、目にみえるものだけでなく、内部構造やソフトウェアを含めて「デザイン」なのだ。どの部分を切り取って評価するかは、使い手に委ねられる。

PHOTOGRAPH BY KUJO HARU

そんなことよりも優先して気にすべきなのが、価格だ。プライベートと仕事を兼用する唯一無二のマシンが必要なら、新しいMacBook Proを選んでも良いだろう。それ以外の人にとって、最廉価の吊るしモデルで274,800円(税込、執筆時点)という価格はいただけない。

だからといって旧型のMacBook Pro(13インチ)を検討するくらいなら、いっそのことM1 MacBook Airを選んだ方がいい。普段使いで思いつくほぼすべての用途が、この一台で足りてしまうのだ。