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グーグルの反トラスト法訴訟と”標準”をものにした検索エンジンの裏側

グーグルが検索サービスにおいて他社の参入を阻害しているとして、米司法省は反トラスト法(独占禁止法)違反でこれを提訴した。かつてマイクロソフト(MS)の市場独占に対して行われた大型訴訟以来、実に22年ぶりの出来事だ。テックラッシュが旺盛を極めるなか、世界の情報を掌握するグーグルは厳しい目に晒されている。

グーグルが検索サービスにおいて他社の参入を阻害しているとして、米司法省は反トラスト法(独占禁止法)違反でこれを提訴した。かつてマイクロソフト(MS)の市場独占に対して行われた大型訴訟以来、実に22年ぶりの出来事だ。テックラッシュが旺盛を極めるなか、世界の情報を掌握するグーグルは厳しい目に晒されている。

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グーグルが検索サービスにおいて他社の参入を阻害しているとして、米司法省は反トラスト法(独占禁止法)違反でこれを提訴した。かつてマイクロソフト(MS)の市場独占に対して行われた大型訴訟以来、実に22年ぶりの出来事だ。テックラッシュが旺盛を極めるなか、世界の情報を掌握するグーグルは厳しい目に晒されている。

グーグルが生まれた1998年、マイクロソフトは20世紀終盤のテクノロジー革命を象徴する企業として、テック業界全体を掌握していた。当時の司法省は、MSがコンピューターメーカーに自社のブラウザを使うよう強制していたことに対して異議を唱える。テック市場を支配する巨大企業への挑戦だった。

マイクロソフトが裁判に全力を傾けるなか、グーグルは検索広告による莫大な利益を元にして、着々と力をつけていった。そうしてMSが敗訴してから数年も経たずして、グーグルはインターネット市場の新たな支配者になったのである。

あれから22年が経ち、今度はグーグルがその責任を追求されることになった。提訴の主旨は、グーグルがメーカーとの排他的な契約によって、自社の検索サービスを標準設定にするよう仕向けているのではないかという疑念だ。司法省は、こうした手法が結果として競合他社の参入を妨げ、技術革新の波を遠ざけていると主張する。

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「Google」の地位確立に潜む仕組み

Googleは今や検索エンジンとして92%もの市場シェアを誇る。その圧倒的地位を確立するにあたってこれまで取られてきた手法に、この問題の核心がある。

グーグルが提供する端末向けOS「Android」は世界シェアの大部分を占めており、大多数のデバイスがこれを採用している。その度メーカーは、自社の端末にAndroidを搭載する代わりに、デフォルトでグーグルのアプリ群(GMS)をインストールし、Google検索を標準設定にするよう求められる。アップルの「iOS」を除けばAndroidは事実上唯一のOSになるため、メーカー側に選択の余地はない。

グーグル側は収益の一部をこれらメーカーに還元することで、取引を成立させている。ユーザーが標準の検索エンジンをあえて変更することは少なく、こうした契約そのものが他の選択肢を効率的に締め出しているという。

一方で、IDCによればアップルはスマートフォン市場において約15%のシェアを保有し、自社の製品に一貫して独自のOSを組み込んでいる。グーグルはアップルに対し推定で毎年80〜120億ドル、日本円で約8,400億〜1兆2,500億円もの大金を支払い、ブラウザー「Safari」で自社の検索エンジンを標準設定にしてもらっている。同様の取引は「Firefox」を手掛けるモジラ(Mozilla)など検索エンジンへのアクセスをもつ複数のサービス・企業に対して行われているようだ。

こうして自社の検索エンジンを支配的な立場に据えることにより、グーグルは検索広告を通じて莫大な収入を得ることができる。そうして稼いだ利益分は、排他的な契約の費用やAndroidを採用する各メーカーへの還元に当てられ、「Google検索」の盤石な地位を支える基盤となる。このようにリソースの殆どをグーグルが独占する状況下において、競合他社はシステム開発に十分な資金を用意できないばかりか、検索精度の向上にデータ構築を試みても、それを実現させるユーザー数を確保できないのだ。

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マイクロソフトの訴訟と似ている?

今回のグーグルに対する訴訟とMSの事例は、自社OSの運用の仕方に焦点が当てられているという意味で共通している。とはいえ、必ずしも一致している訳ではない。

マイクロソフトは、テック業界における自社の支配的立場を利用して、各メーカーに多額の使用料を支払わせていた。彼らが提供する「Windows」は、当時世界で唯一のOSだったのである。コンピュータメーカーに対してネットスケープではなく自社のブラウザーを使うように強制していた事実もまた、裁判の経過で不利に働いた。対して、現在のテック業界はMS一社ではなく、複数の企業によって支えられている。グーグルはあらゆる事業分野において大手テック企業との厳しい競争にさらされていると主張する。事実、グーグルは自社のOSを無料で提供しており、議論の焦点はOSよりむしろ「検索」の独占に絞られている。

争点は異なるものの、多様性の喪失に対する根本的な危惧は変わっていない。かつて世界シェアを欲しいままにしたブラウザ「インターネット・エクスプローラー(IE)」が度重なる独自実装でWeb開発を後退させたように、グーグルが「検索」分野を独占し続ける限り、Web標準が形骸化し、インターネットの健全性が損なわれる危険は常に存在する。

グーグルの現最高経営責任者、スンダー・ピチャイCEO。 Image: World Economic Forum

グーグルの主張

こうした追求に対し、グーグルはAndroidやサービスの仕組みに他社を排除する意図はないと説明する。たとえGoogleが標準の検索エンジンであったとしても、ユーザーはこれを容易に変更することができる。すなわちGoogle検索のシェアが高いのは、使用を強制しているからではなく、ユーザー自らがグーグルの検索エンジンを選んだ結果だというのだ。

ならば、アップルやモジラにグーグルが多額の資金を費やす理由を明確にせねばならないだろう。グーグルはまた、検索の分野においても「KAYAK」や「Yelp」など複数のサービスとの間で激しい競争にさらされていると主張する。実際のところ、20年前のマイクロソフトと異なりグーグルは他企業との積極的な競争に身を投じる立場であり、同時に全ての分野で勝っている訳ではないのだ。こうした主張の如何はさておき、司法省はグーグル側から未だ決定的な証拠を引き出せていない。

テクノロジー業界全体を支配する巨大企業への反発が強まるなか、今回の訴訟はその流れが具現化したものと捉えることができる。これを機にテックラッシュがより活発化し、フェイスブックやアマゾンといった他の企業へも追求の目が向けられるかもしれない。一方で、急成長する中国テック企業への対抗力が衰えることへの懸念もある。大統領選も踏まえ、今後の動向に注目していきたいところだ。

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