米・ブルームバーグは2023年1月、関係筋の情報として、アップルが自社開発のMRヘッドセットを年内に発表予定であることを報じました。
一方で、兼ねてより開発が伝えられていた拡張現実(AR)グラスについては、技術的課題から発表が延期になったと伝えられています。
現在VRヘッドセット市場で優位を占めているのはザッカーバーグ率いるメタ・プラットフォームズで、IDCの調査では2022年に同社が実に90%ものシェアを占めたとの報告もあります。
ARグラスは開発延期?
アップルについては、兼ねてよりARグラスの開発が取り沙汰されていました。「Apple Glass」と呼称されていたそれは最新のiPad Proと同様の「LiDAR(ライダー)」センサーを備えており、iPhoneとの連携で動作すると考えられていました。
リーク情報を扱うユーチューバーのジョン・プロッサーは「Apple Glass」について、元々は2020年の第4四半期に発表会の目玉として「iPhone 12」と共に発表される予定だったと主張します。
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実際アップルのティム・クックCEOはメタバースと仮想現実(VR)に関して慎重な姿勢を示しており、すでに展開されている「ARKit」の存在も鑑みれば、同社がヘッドセットよりも先にARグラスを開発するだろうという見方が優勢でした。
ところがアップルは現在、現実世界とデジタル情報をより密接に統合させた複合現実(MR)デバイスの製品化に尽力しており、ARグラスはそのフォローアップとして位置付けられているようです。
ブルームバーグによればARグラスの延期は技術的な課題によるもので、自社開発のプロセッサーや関連技術を搭載しながらも一日中装着できる軽量性とバッテリー持ちを実現するのに苦労しているといいます。
MRヘッドセットは年内に発表か
メタのVRヘッドセット「Quest Pro」。 IMAGE BY META
アップルが年内に発表するというMRヘッドセットは、メタが発売した高級ヘッドセット「Quest Pro」の対抗馬になるとみられています。
米・有料テックメディアのThe informationは開発に携わった人物の証言として、同社のMRヘッドセットは支払い認証やログインに虹彩認証を採用し、内蔵カメラによりユーザーの視線を追跡するアイトラッキングを実現すると報じました。
アイトラッキング技術には複合現実(MR)の体験に説得力を持たせるだけでなく、視野領域にグラフィック精度を集中させることで処理能力を節約する狙いもある(フォービエイテッド・レンダリング)のだとか。
アップルはこの技術に関して、ドイツのSensoMotoric Instrumentsを2017年に買収しています。
また、自社のMRデバイスにMacグレードのプロセッサーであるM2チップを使うことが高コストの要因になっている、とブルームバーグは指摘します。
Quest Proより軽量の筐体に加えて高解像度ディスプレイの採用が予想されており、同社初のMRヘッドセットは3,000ドル(日本円で約39万円)になるとの見方も。
アップルは年内に第一弾となるMRヘッドセットを発表し、2024年か25年の初めに廉価グレードを追加で投入する方針。こちらはプロセッサーにiPhone向けのAシリーズを使うことで、コスト削減を狙っているといいます。
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