ブラッシュアップされたXPS 15は、最新の13インチ同様、ハイエンドモデルに相応しい堅牢さと品位を備えている。NDIVIAの独立型GPUを備えており、特に写真編集や動画編集を主とするクリエイターに適した機種といえるだろう。 デル自身「最高傑作」と言うように、最新のXPSラインナップは誰にでもフィットする柔軟性と、購買欲を刺激する魅力で占められている。
自粛期間が長引くにつれ、パソコンに触れる機会も格段に増えたと思う。IDCによれば、2020年第2四半期のPC出荷台数は家庭市場で159万台。前年比で実に40.7%の増加を記録した。
背景にあるのは、コロナ禍によるテレワークの普及だ。自宅でも会社でも同質の作業をこなすために、仕事用のノートパソコンを求める動きが高まっている。
以前なら、ノートパソコンは持ち運びやすさを考えて、軽量さやサイズで選ぶのが主流だったはずだ。ところがいま求められるのは、最低限必要な仕事をこなせる環境、それに見合うスペックではないだろうか。
どんな作業もストレスなく実行し、時にはエンタメも楽しめる「万能な一台」があれば、まさしく理想的だろう。そしてなにより、使っていてワクワクするような魅力を秘めたプロダクトこそ、素直に欲しいと思えるのだ。
美術品を愛でる感覚
「Dell XPS 15 2020(9500)」は、デルのノートラインナップでも最上位に位置する、ハイエンドPCだ。デザインを刷新した本機は、同じくリニューアルされた「XPS 13」に準じたもので、従来より美しく、スリムになった。
重量は前モデルと同じだが、サイズがコンパクトになったぶん、より密な印象を受ける。

同インチの前モデルより小さくなった筐体
アルミ削り出しのボディーにはアルマイト加工が施されており、プレミアム相応の高級感と堅牢性を保証する。XPS 13にならい、フロスト&アークティックホワイトとプラチナシルバー&ブラック、2つのカラーが用意された。
パームレストは、XPSシリーズではおなじみのカーボンファイバー仕上げ(ブラック)となっている。適度な抵抗があるので手を固定しやすく、また材質上指紋がつきにくいのが利点。なにより、デザイン性が保たれているのが評価すべき点といえよう。

プラチナシルバー&ブラックは独特の触り心地が特徴のカーボンファイバー仕上げ。指紋がつきにくく、触り心地の良いパームレストが魅力だ
13インチに引き続き、XPS 15(2020)のプロダクトデザインは非常に完成度が高い。ここまでくると、もはや単なるノートPCではなく、一種の芸術品として見惚れてしまう。
狭額縁ディスプレイの価値は美術的側面にとどまらない
XPSシリーズのアイデンティティーたる「InfinityEdge」ディスプレイは、多くのPCがベゼルレスに近く今でも強烈な輝きを放っている。4面狭額縁、アスペクト比16:10に進化した画面は500ニトの明るさを有しており、作業時の効率性はもちろん、コンテンツ視聴時のインパクトも十分だ。
そのデザイン的価値は言うまでもなく素晴らしいが、実際に使ってみると実用面でも大きく貢献していることに気づく。一つは、以前より筐体が小さくなったこと。XPS 13(2020)を初めて触ったとき、12型のPCと変わらないサイズ感に驚かされた。XPS 15(2020)であれば、14型、あるいはそれ以上にコンパクトな筐体と言っても良い。そこには、重さを感じさせないだけの説得力がある。


最新モデルは4面全てが狭額縁となり、画面下部にあったデルのロゴマークも省かれた
加えて、画面と現実を遮る「枠」が限りなく取り払われることで、他のノートパソコンを遥かに凌駕する没入感を得ることができた。特に作業時の体感は心地良く、15インチという作業領域の広さも相まってマルチタスクが今まで以上に捗る結果となった。
オプションについては、フルHD(1920×1200)か4K、光沢の有無、タッチ対応の有無を選ぶことができる。ボクが使用した4Kタッチディスプレイは非常に繊細で美しかったが、画面サイズを考慮すればフルHDを選択しても顕著な違いはないだろう。
ヒンジ部の変更は使い手次第でマイナス
デルは新しいXPSシリーズでヒンジが「洗練された」と言うが、複雑なことに場面次第ではこの変更が仇となることもある。確かに、デザインは非常にスッキリしている。側面と段差がなく均一で、先端に向けて細くなるくさび型のエッジと合わせて、筐体そのものをスマートにみせてくれる。
筐体カバーは閉口時に「開きやすい」仕様になっており、平置きで勝手に開くことはないが、リュックに入れようとして縦向きに置くと、わずかにカバーが開いた状態になる。

開けやすさを考慮しての設計と思われる
これがヒンジ構造によるものか斥力を生む内蔵マグネットによるものかは不明だが、開いた隙間に小物が挟まりそうになり慌てふためいた事実は変わらない。
一方で、平置き時に片手でカバーを開くことができるのも、XPS 15の強みだ。自重もあるだろうが、その機能にはヒンジ部の性能が確かに貢献していると思われる。
使い手も洗練させるインターフェース


13インチに続いて、15インチでもインタフェースが刷新された。その構成は電力供給用のUSB-Cポート(3.2 Gen2)が一つ、Thunderbolt 3対応USB-Cポート(3.2 Gen2)が二つに、フルサイズSDカードスロット、そしてイヤホンジャックとシンプル。使い手も否応なくUSB-C環境への移行を迫られる(ちなみに17インチでは、USB-Cポートがもう一つ追加される)。
13インチのレビューでも述べたが、SFカードを直挿しできる仕様は、僕のように写真編集をする人間にとって非常に有難い。容量の大きいRAWデータを無線で送信しようとは思わないし、ケーブル経由でPCに送るのも案外容易ではないのだ。
標準配列のフルサイズキーボード

キートップが広く打ち間違いが少ない
新しくなったXPS 15が備えるのは標準配列のフルサイズキーボードで、13インチと基本的な仕様が統一されている。まずキー構造が通常のメンブレン式に戻り、そして従来モデルにあった「PageUp」「PageDown」の専用キーは姿を消した。
右上に指紋センサーを配しているので、Windows Helloによる顔認証の代替として指紋認証を選ぶことができる。静音性は素晴らしく、暗所でのバックライトも必要十分だ。その質はハイエンドモデルに相応しいと言って良い。


バックライトは必要十分。キー配列右上に指紋認証センサーも備える
スピーカーは音質が向上
トラックパッドが従来より大きくなったのは良いが、クリック感はもっと改善できると思う。13インチのトラックパッドはクリック音が静かで、場所によってムラのない均一な沈み込みが好印象であった。15インチのそれは、四隅の沈み込みがとりわけ深く沈み、場所によって押し心地が異なる。そのフィードバックも13インチよりやや強めであり、マウスなしでIllustratorの作業をしたりExcelを触っているときに無視できないストレスを感じた。

従来モデルより大きくなったトラックパッド
スピーカーの音質は、上位モデルの17インチを除けばXPS史上最も優れていると言える。サウンドの迫力はもちろん、高低音域の再現度もかなり高い。具体的に言えば、外部スピーカーなしでNetflixのコンテンツに没頭できるくらいには素晴らしい。
それでも同じ15インチのMacBook Pro(2020)と聴き比べると、やや音がこもっている印象を受ける。ただしあくまで比較したらと言うだけで、XPS 15の使用時に音の粗さを感じることは決してない。

キーボード左右にスピーカーを一つずつ備える
Surfaceに勝るリペアビリティ
iFixitが高い評価を示したように、XPS 15は修理やパーツ交換の可能性を強く意識したつくりになっている。その内部には2つのM.2スロットと同じく2つのRAMスロットがあり、ユーザー自身による増設が可能である(当然、購入前にスペックを選択することもできる)。バッテリーは前モデルよりやや小さくなっているが、これは筐体サイズの縮小によるものと思われる。
17インチにあるようなベイパーチェンバーは搭載しないが、GPUを直接冷却する新素材の冷却板を備えており、その性能は少なからず向上している。ヒンジ下と底部の排熱口から主な熱を逃す仕組みは確かに合理的で、「Minecraft」を影MOD導入下で動かしても筐体がほんのり熱くなる程度であった。

ヒンジ裏のスリットと側底部の排熱口
とは言ったものの、残念ながらゲームに向いているとは言えない。CPUの最上位はCore i7-10875H、独立GPU(dGPU)にはGeForce GTX 1650Ti MaxQのオプションがあるが、ゲーミングラップトップに及ぶスペックと排熱構造は持っていないので、大半のゲームではフレームレートを落とすかプレイを短時間に制限するか選択せねばならない。
個人的にはこのラップトップでOpenGL駆動の「マイクラ」が出来れば最高だと思うので、同サイズのRadeon搭載モデルを強く希望したいところだ。
Cinebench R15スコア
Default
機種 (型番) |
シングル | マルチ |
ASUS TUF A15 (Ryzen 7 4800H) |
189 | 1,871 |
Dell G5 15 SE (Ryzen 7 4800H) |
188 | 1,818 |
MSI Bravo 15 (Ryzen 7 4800H) |
188 | 1,630 |
Dell XPS 15 (i7-10750H) |
190 | 1,258 |
MSI GS66 Strealth (i7-10750H) |
189 | 1,239 |
FPS rate – Gaming
1080p, 平均, 小数第1位を四捨五入
ゲーム名 | FPS |
DOOM Eternal | 61 |
Call of Duty: Modern Warfare | 55 |
Apex Legends | 81 |
Overwatch | 117 |
Red Dead Redemption 2 | 31 |
以上のデータ値は、Hardware CanucksとDave Leeの計測値を引用。環境や機種のパフォーマンス次第で値の変動がある
ハイエンド相応の性能とビルドクオリティー
ブラッシュアップされたXPS 15は、最新の13インチ同様、ハイエンドモデルに相応しい堅牢さと品位を備えている。性能はゲーミングPCのそれに及ばないが、13インチノートではなくあえてこの機種を選ぶ正当性がある。NDIVIAの独立型GPUを備えており、特に写真編集や動画編集を主とするクリエイターに適した機種といえるだろう。
狭額縁の4Kディスプレイは抜群の没入感を提供し、数あるWindows PCからこの一台を選ぶ確かな根拠となるだろう。デル自身「最高傑作」と言うように、最新のXPSラインナップは誰にでもフィットする柔軟性と、購買欲を刺激する魅力で占められている。
編集者注:「デル アンバサダープログラム」について

今回レビューに使用したXPS 15(2020)は、デルアンバサダー限定のモニター企画で貸与いただきました。アンバサダーには誰でも登録可能で、限定イベントや企画に参加できたり、デル製品を通常より安く購入できたりと特典が盛り沢山。デルに興味のある方は是非参加してみてはいかがでしょうか。