デル(Dell)のモバイルノート 「XPS」 は、 デザインと性能にこだわったハイエンドシリーズの総称です。
Questではデル(Dell)というベンダーの性質を背景に、 複数の視点からXPSの魅力を深掘りしてきました。 今やブランドの代名詞となった狭額縁ディスプレイはもちろん、 堅牢なキーボードやトラックパッドなど随所に垣間見える優れたビルドクオリティーは、 数あるWindows PCのなかでその存在を際立たせています。
デルといえばB to B(Business to Business)のイメージが強いかもしれませんが、 XPSはその製品群においてB to C(Business to Customer)、 特にプロダクトデザインを主題に据えた象徴的なラインナップなのです。
そして2020年、 デルは主力モデルたる 「XPS 13」 のデザインを刷新しました。 もともと高い完成度で知られていたXPSシリーズですが、 本モデルでは細かな部分がさらに改良され、 欠点を見つけるのが難しいほど隙のない一品に仕上がっています。
ノートPCラインナップ (Dell)
Gシリーズ | ライトゲーマーを意識したグラフィック強化モデル | |
---|---|---|
XPS | Plus | XPSの上位モデル |
デザインと性能にこだわったハイエンドシリーズ | ||
Inspiron | 7000 | 大衆向けミッドレンジ〜ハイエンド |
5000 | 大衆向けミッドレンジ | |
3000 | 価格を抑えたエントリーモデル |
… 今回のレビュー構成
スタイリッシュなデザイン
新しいXPS 13 (9300)のプロダクトデザインは総合的に見て非常に質が高く、 なにより美しさがあります。 13型ノートとしてはかなりコンパクトに作られていて、 12インチのMacBookと並べても大差ないサイズ感です。
小柄な筐体に良いアクセントを与えているのはアルマイト加工が施されたくさび型の金属エッジで、 プレミアムラインを名乗るに相応しい高級感を味合わせてくれます。
本モデルで特徴的なのは、 片手で筐体を開けるようになったことです。 従来モデルではカバーを開くのに両手で上下面を抑える行程が必要でした。 些細な変化かもしれませんが、 ラップトップで日常的に作業をする人にとって、 使い勝手が大きく向上する良いアップデートだと思います。
およそ1.2kgという絶妙な重量感が片手開きを可能にする。 VIDEO BY KUJO HARU
従来のモデルに搭載されていたバッテリー残量を示すインジケーターは、 本モデルになって姿を消しました。 XPSユーザーにはよく思わない人もいるでしょうが、 一般のラップトップユーザーからすれば気にならない変化です。
XPSの特徴でもあったバッテリーインジケーターは本モデルから姿を消した。 左:2019年モデル 右:2020年モデル。 PHOTOGRAPH BY KUJO HARU
前モデルから引き続き、 フロスト&アークティックホワイトとプラチナシルバー&ブラックの2種類が用意されています。 XPS独特のカーボンファイバー仕上げ(ブラック)については好みが分かれるところかもしれませんが、 少し弾力があり柔らかなパームレストは、 多くの人が使ううちに慣れ親しむことができるでしょう。 なお、 ホワイトとブラックで仕上げと触り心地が若干異なる点は留意した方が良いかもしれません(ホワイトはファイバーグラス仕上げです)。
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洗練された狭額縁ディスプレイ
16:10の4面狭額縁ディスプレイが使い手にスタイリッシュな印象を与える。 PHOTOGRAPH BY KUJO HARU
「狭額縁」 の衝撃と共に登場したXPS 13の2015年モデルから5年、 最新モデルではついに4面すべてのナローベゼル化を実現しました。
従来モデルと比べて筐体はコンパクトになりましたが、 画面サイズは大型化して13.4インチになっています。
特筆すべきは、 画面のアスペクト比が従来の16:9から16:10になった点。 Webページや各種ドキュメントをはじめ、 縦スクロールに依存するコンピュータの使用形態にはよりマッチする比率と言えます。
レガシーな16:9比率を採用していた従来モデルに比べ、 最新モデルでは端ギリギリまで拡大された16:10の大型ディスプレイが作業効率を高めてくれる。 IMAGE BY KUJO HARU
解像度は1920 x 1200のタッチ非対応のフルHDディスプレイと、 解像度3840×2400のタッチ対応の4Kディスプレイの2種類から選ぶことができます。
13インチに4Kディスプレイを搭載するメリットは少ないように思いますが、 Photoshopで写真のレタッチや現像をするとその効果を実感できますし、 4KHDR画質でYouTubeを見る優越感も一度は味わっておきたいものです(4KディスプレイはDisplayHDR 400に対応)。
インターフェース
USB-C(Thunderbolt 3)ポートは昨年モデルから一つ減って両側面に一つずつ、 計2つとなりました。 加えて、 右側面にはmicroSDカードスロットを備えています。
構成だけをみるならMacBook Airに近いかもしれません。 少なくとも、 沢山の外部機器を接続する人にとってはアダプターがほぼ必須になるでしょう。
右側面:USB-C(Thunderbolt 3)、 microSDカードスロット。 PHOTOGRAPH BY KUJO HARU
左側面:USB-C(Thunderbolt 3)、 ヘッドホンジャック。 PHOTOGRAPH BY KUJO HARU
画像編集や動画編集などの用途を考えれば、 カメラ内のデータを即座にパソコンへと移せるmicroSDリーダーの存在は重要です。 データ移行のクラウド化が急速に進む昨今ですが、 容量の大きいRAWデータを瞬時に転送できるほどのポテンシャルは未だ有していないように思います。
XPS 13 (9300)はWindows Helloの指紋認証と顔認証、 両方に対応しています。 指紋認証を兼ねた電源ボタンは筐体の小型化に伴いキーボード上端にその座を移し、 キーボード周りの一体感が従来モデルに増して強調されました。
画面上部に配されるのは顔認証を兼ねる720pフロントカメラ。 PHOTOGRAPH BY KUJO HARU
顔認証機能を兼ねるウェブカメラはディスプレイ中央上部に収まりよく配置されているものの、 解像度は従来モデルと同じ720p。 「Zoom」 で画質を自慢するのは難しいかもしれません。
顔認証の速度に関しては遅延を感じないほどに良好で、 個人的には指紋認証の利便性を差し置いてこちらを使う頻度が圧倒的に多くなっています。
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合理的なキーボード
本モデルの実機を試すまでは、 筐体幅が小さくなったことでキーボードの質が悪化するのではないかと懸念していました。 ところが実際に使ってみると驚くべきことに、 従来モデルに増して使い心地が向上しているのです。
実測19ミリのフルサイズキーボードは、 設計・キーレイアウトともに従来のモデルから一新され、 面積も9%増加しました。 これを実現するため、 キーボードは筐体幅いっぱいに拡張されています。
新しいキーレイアウトは、 非常に合理的で使いやすくなっています。 左右の矢印キーが大きくなった一方、 PageUpと PageDownキーが廃止されたことで、 打ち間違えは格段に少なくなっています。
電源ボタンを組み込んだことでキーボードの上端の配置が変わっており、 使いこなすには時間を要するかもしれません。
前モデルまで搭載されていた 「PgUp」 「PgDn」 キーが廃止され、 一般的な矢印キーの配列になった
従来モデルではキーボード横に孤立していた指紋認証兼電源ボタンが組み込まれ、 キーボード上端に再配置された
実際に打ち比べてみると、 従来モデルと比べて打鍵感がソフトになっていることに気づきます。 というのも、 XPSシリーズにおける”個性”の一つでもあった磁力浮遊式の 「MagLev Keyboard」 が本モデルからはしれっと廃止され、 一般的なメンブレン式に戻されているのです。
個人的には確かなフィードバックが返ってくるMagLev Keyboardの打鍵感が気に入っていたので、 少し残念ではあります。 とはいえ、 ラップトップで主流のメンブレンキーボードを採用したことは乗り換えのハードルが幾分低くなったとも言えるでしょう。
トラックパッドは従来モデルより若干大きくなっているものの、 体感では有意な差を感じません。
従来モデルでは沈み込みが深く、 「カチッ」 という大きめの音を伴う強いフィードバックが印象的でしたが、 本モデルではよりマイルドに、 クリック音はより静かになっています。
パフォーマンスは十分、 SSD換装も対応
XPS 13 (9300)はCPUに第10世代インテル製プロセッサーを採用。 左右に一つずつ配置されたファンが全体を効率的に冷却する仕様になっています。
気になる点としては、 ファンの音と排熱性能でしょうか。 ダブルファンが全開で回っているときの騒音は、 集中力を削がれることが少なくありません。 排熱性能については、 ヒンジの裏と背面に排熱口を設けて対策していますが、 Adobe系やレンダリングソフトを使用すると、 キーボードを打つ手に熱が伝わるほど筐体が熱くなり、 ユーザーに不安を感じさせることがあります。
内蔵グラフィックスに関してはIntel UHD GraphicsまたはIris Plus Graphicsから選ぶことになりますが、 GeForce MX250やMX330などのディスクリートGPU(dGPU)には性能面で及びません。
またHardware Canucksの計測によれば、 動画のレンダリングなど特定の負荷下で、 他の機種に比べて処理能力が著しく低下する現象が指摘されています。
SSDは512GBと1TB、 メモリは8GBから最大16GBまでのオプションが用意されています。 本モデルでも引き続きSSD(M.2)の換装が可能(同じXPSでも2-in-1の最新モデルはSSD交換ができなくなっている)。 一方でメモリはオンボードのため、 購入前に熟考を迫られるかもしれません。
内蔵バッテリーは52Whで、 45W出力のACアダプターが付属します。 4Kモデルはやはり消費電力が大きく、 フル充電からの通常使用でも10時間は持たないといった様子。 かといってすぐにバッテリーが無くなることもないため、 一般的な用途であればストレスを感じることは少ないでしょう。
なおフルHDモデルのバッテリー持続時間が4Kモデルに比べおよそ4〜6時間ほど長く、 省電力性とコストパフォーマンスをとるならフルHDモデルが最適かもしれません。
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Windows PCのゴールドスタンダード
XPS 13は価格においても妥協がありません。 他メーカーのハイエンドPCと比較しても、 XPS 13(2020)はリーズナブルな価格帯に収まっています。 1TBストレージが20万円前後で手に入るメリットは大きく、 予算に余裕があるなら16GBRAM、 1TB SSDの構成を選ぶのが良いかもしれません。
XPS 13 (9300)は従来の課題を着実に克服したことで、 欠点を見つけるのが難しいほど隙のない一品に仕上がっています。
もともと企業向けの機能性重視なハードウェアを得意としてきたデルにとって、 プロダクトデザインに主軸を置いたコンシューマー向けブランドの構築は大きな課題でした。
デザイン・設計ともにフルモデルチェンジを果たしたXPS 13は高いハードルを見事に乗り越え、 ラップトップ市場を凌駕するレベルつくりが洗練されています。
2-in-1スタイルのPCやタブレット型ノートなど、 ユニークな筐体が注目を集める昨今。 王道のクラムシェル型を守りつつ必須要素を漏れなくおさえたXPS 13は、 多くの人にとってラップトップ購入の第一候補になるはずです。
「デル アンバサダープログラム」 について
今回レビューに使用したXPS 13 (9300)は、 デルアンバサダー限定のモニター企画でお借りしたものです。 アンバサダーには誰でも登録可能で、 限定イベントや企画に参加できたり、 デル製品を通常より安く購入できたりと特典が盛り沢山。 デル製品に興味のある方は是非参加してみてはいかがでしょうか。
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