ワンプラス(OnePlus、 万普拉斯)の共同創業者カール・ペイ(裴宇)が英国で立ち上げたNothing。 2021年に同社初のプロダクトとして世に放たれた 「Nothing Ear (1)」 は、 印象的なデザインと優れた機能性で業界の注目を集めました。
早くも確立されたNothingの設計思想は、 続く 「Nothing Phone」 に受け継がれます。 それは成熟したデバイス市場に新たな価値を提供し、 忘れていた感動体験を呼び覚ますものでした。
そして2024年、 第三世代として生まれ変わった 「Nothing Ear」 と初の廉価版モデル 「Nothing Ear (a)」 は、 上記の流れを汲みながらも、 音質と機能性にさらなる磨きがかかった一台に仕上がりました。 今回は新しいケースデザインとカラーが印象的なNothing Ear (a)を詳しくレビューしていきます。
Nothing Ear (a) | ||
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メーカー | Nothing Technology | |
発売日 | 2024年4月 | |
質量 | イヤホン | 4.8g (片耳) |
充電ケース | 39.6g | |
サイズ | 充電ケース | 47.6×63.3×22.7mm |
快適性 | 左右独立受信 | |
ノイズキャンセリング | (最大45dB) | |
外音取り込み | ||
アプリ対応 | (Nothing X) | |
防塵防水 |
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ワイヤレス充電 | ||
急速充電 | 10分充電で最大10時間再生可能 | |
Bluetooth | Bluetooth 5.3 | |
バッテリー | イヤホン単体 |
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イヤホン+充電ケース |
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音質 | コーデック | SBC/AAC/LDAC |
ドライバー | 11mm ダイナミックドライバー PMIおよびTPU製 |
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カラバリ | ブラック/ホワイト/イエロー |
ANC : active noise cancelling
Nothing Ear と Nothing Ear (a) の違い
「Nothing Ear」 は2023年に発売された 「Nothing Ear (2)」 の後継機で、 初代から数えて第三代目のモデルになります。 一方 「Nothing Ear (a)」 は同社のスマートフォン 「Nothing Phone (2a)」 と同じ命名規則に沿ったもので、 Nothing Earの廉価版として今回新たに開発されました。
「Nothing Ear (1)」 「Nothing Ear (2)」 とくれば、 次の名前は 「Nothing Ear (3)」 になると思われましたが、 今機種では冠詞が省かれてシンプルな名称に。
価格はNothing Earが150ドル(22,800円、 税込)、 Nothing Ear (a)が100ドル(14,800円、 税込)で、 後者の方がより手頃な価格になっています。
最大の違いはケースサイズです。 Nothing Earは、 従来機と同じスクエア型のスケルトンケースを採用していますが、 23年発売のNothing Ear (2)よりもわずかに大きく、 重くなっています。
Nothing Ear (a)はよりコンパクトなケースと軽さで持ち運びに適していますが、 ワイヤレス充電非対応であり、 防水性能もNothing Earに劣ります。
両者の本体カラーにはブラックとホワイトを採用。 ハチをイメージした黄色と黒のツートンカラーはEar (a)だけの特別色で、 モノトーンなNothingの印象を良い意味で覆してくれます。
Nothing Ear | Nothing Ear (a) | |
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モデル | ||
ケースサイズ | 55.5×55.5×22mm | 47.6×63.3×22.7mm |
ケース重量 | 51.9g | 39.6g |
バッテリー |
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ANC | 最大45dB (前モデルは最大40dB) |
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防塵防水性能 |
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ワイヤレス充電 | ||
マルチポイント接続 | ||
パーソナルサウンド | ||
コーデック |
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ドライバー | 11mmダイナミックドライバー | |
振動板 | セラミック | PMI+TPU |
カラー | ブラック/ホワイト | ブラック/ホワイト/イエロー |
価格 | 22,800円(税込) | 14,800円(税込) |
Nothing Ear と Nothing Ear (a) の比較。 SOURCE BY NOTHING
Nothing Ear (a)のチップセットはNothing Earと比べて性能に劣るものの、 ノイズキャンセリングの程度は同等、 ドライバーも共通で、 通話品質に欠かせないマイクも同数を揃えています。 むしろ、 性能を抑えることでバッテリー持続時間はNothing Earよりも長くなっています。
すなわち、 Nothing Ear (a)を選ぶ明確な利点は ① 価格が安い ② バッテリー持続時間が長い ③ よりコンパクトで軽量 の3点に集約されるのです。
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デザイン : 手にするだけで高揚感
初代 「Nothing Ear (1)」 はスウェーデンに本社を置くTeenage Engineeringとの共同開発により生まれました。 「OP-1」 や 「ポケットオペレーター」 に代表される同社の洗練されたデザイン言語が、 Nothing Earにも存分に詰め込まれています。
Nothing Ear (a)もこの系譜を踏襲しており、 スケルトンで小柄な筐体は、 それでいて安っぽさを感じさせない絶妙なバランスで美しくまとめられています。
ケースの厚みは約2.3cmに抑えられており、 Nothing Earより一回り小さいサイズ感も相まって、 取り回しの良さは抜群。 ポケットに入れてもかさばらないため、 持ち運びのハードルがぐっと下がります。
Ear (a)には3対のイヤーチップ(サイズ別)と、 充電用のUSB-Cケーブルが同梱されています。 初めから装着されている中サイズは、 一般的な日本人の耳にもおそらくフィットするであろう程良い大きさと言えるでしょう。 イヤホンのサイズ・形状は2つのモデルでほとんど違いがないので、 「Nothing Ear (2)」 を長らく使ってきた筆者でもすぐに慣れることができました。
操作性 : 専用アプリがさらに進化
Nothing Ear (a)は、 イヤホンのステム(軸)を指先でつまむプレスコントロールによって、 曲の再生/一時停止や、 前後の曲にスキップするといった操作が可能です。
IMAGE BY QUEST
- 1回つまむ
再生/一時停止、 通話応答/終了 (カスタマイズ不可) - 2回つまむ
前の曲にスキップ/次の曲にスキップ/音声アシスタント、 着信拒否 - 3回押す
前の曲にスキップ/次の曲にスキップ/音声アシスタント - つまんで長押し
ANC・外音取り込みの切り替え/音量を上げる/下げる/音声アシスタント - 2回つまんで長押し
ANC・外音取り込みの切り替え/音量を上げる/下げる/音声アシスタント
コンパニオンアプリ 「Nothing X」 を使えば、 各操作に割り振る機能をカスタマイズすることができます。 同アプリではイコライザーの調整やノイズキャンセリング/外音取り込みモードの切り替え、 バッテリー残量の確認が可能です。
またアップデートにより、 アプリ上から 「ベースエンハンス」 機能のカスタマイズに対応。 低音域の強調度を5段階で調整できる機能で、 標準の音構成では物足りないと感じる方におすすめです。
Nothing X
Nothing Technology Limited無料posted withアプリーチ
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機能性 : ANCは45dBのノイズを軽減
Nothing Ear (a)のステム上部に搭載されたマイクは、 通話だけでなくアクティブノイズキャンセリング(ANC)の品質にも必要不可欠です。
Nothing Xアプリでは、 ANCの強弱を 「高」 「中」 「低」 「アダプティブ」 から選択可能。 アプリ上でテストを行うと、 ノイズキャンセリングをパーソナライズできる機能もあります。
アダプティブモードは外環境に応じて自動的にANCの強度を調節する機能。 今作ではANCが強化され、 最大45dBまでの騒音をカットできるようになりました。 「AirPods Pro」 やソニーの 「WF-1000XM5」 には当然及ばないものの、 これらは2万円台後半〜3万円台もする高級品。
本製品は、 手頃な価格で一級品に劣らないノイズリダクション機能を体験できるのが魅力です。 雑踏や車の走行音といった低音の遮音性は高い一方、 人の話し声や風切り音などの環境音は完全にカットできず、 ある程度の軽減にとどまります。
個人的にはちょうど良い塩梅に感じますが、 完全な遮音性を重視する方には不向きかもしれません。
2台のデバイスに同時接続できる 「マルチポイント機能」 は、 実際に使ってみると非常に便利。 たとえばPCで作業中にスマートフォンで電話を受ける際、 あらかじめ2台にNothing Ear (a)を接続しておけば、 切り替え操作不要で電話に出ることができます。
音質 : LDAC対応でハイレゾまでカバー
Nothing EarとNothing Ear (a)は、 ハイレゾ音源の伝送形式として一般的なLDACにシリーズで初めて対応しました。 Ear (2)の際はLDHC 5.0というコーデックで対応していたものの、 対応するスマートフォンが少なく、 利用するにはかなりハードルが高かったのです。
音質も優れています。 中音域が非常に開放的で、 かつ低音にもしっかりと存在感のある、 バランスの取れた音を届けてくれます。 音の解像度も高く、 ギターやドラム、 ピアノが重なり合うパートでも各々がかき消されることなく聴き取ることができます。
1万円台前半のイヤホンとは思えない重厚感のあるサウンドで、 チープさを全く感じさせない仕上がり。 Nothing Ear (2)の上質な音に慣れていましたが、 乗り換えても全く違和感がないのは素直に驚きでした。
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総括 : 正統進化で死角なき逸品に
代を経るごとに細かな改良が施され、 音質・機能性ともに着実な成長を見せてくれる 「Nothing Ear」 。 特に廉価版のNothing Ear (a)は従来機のアドバンテージを引き継ぎながらも、 絶妙なコストカットで価格帯を抑えた死角なき逸品と言えます。
Beatsやソニー、 サムスンなど各社が100ドルの価格帯で優れたワイヤレスイヤホンを販売していますが、 同価格帯でここまでの音質とANC性能を両立する製品はごく僅かです。 なによりもNothing特有のデザインがこの製品を強烈に差別化しており、 音よりも見た目に惹かれて同製品を手に取る人も多いはず。
率直に言って、 廉価版にここまで満足してしまうと、 今度は 「Nothing Ear」 の存在意義に対して疑問を抱かざるを得ません。 実際に、 第二世代と第三世代で比較するとその違いは微々たるもので、 Nothing Ear (2)のユーザーにとって新型に買い換えるメリットを見出すのは難しいです。
とはいえ、 毎年アップデートされるイヤホンに劇的な進化を求めるのも酷な話です。 少なくともNothing Earが価格に見合った、 あるいはそれ以上の品質を維持しているのは確かで、 新しいイヤホンを探している人には間違いなく有力な選択肢の一つと言えるでしょう。
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