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PHOTOGRAPH BY KUJO HARU

Review

デザインから機能性へと軸を移した 「Nothing Ear (2)」 は、 アップル一強のワイヤレスイヤホン市場を崩せるか?

Nothingの最新ワイヤレスイヤホン「Ear (2)」は優れた音質とノイズキャンセリング性能を備え、同価格帯のライバル製品を凌駕しています。ただし性能的に妥当な価格であることは、ユーザーを惹きつけるための必要条件ではありません。Nothingがゲームチェンジャーとなるためには、コストの再考が求められるでしょう。
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英国発のスタートアップNothing Technologyが、 ワイヤレスイヤホンの最新モデル 「Nothing Ear (2)」 を発表しました。 2021年半ばに同社初の製品となる 「Nothing Ear (1)」 を発売してから1年半、 早くも後継機種の登場になります。

歌い手と楽器の一体感を保ちながら、 確かな音響空間を両立しているのがEar (2)の強み。 柔軟性に優れたポリウレタンと剛性のあるグラフェンを組み合わせることで、 Ear (1)よりもパワフルな低音を実現しました。

デザインから機能性へと軸を移した  「Nothing Ear (2)」  は、  アップル一強のワイヤレスイヤホン市場を崩せるか?

PHOTOGRAPH BY KUJO HARU

Nothing Ear (2)
メーカー Nothing Technology
発売日 2023年3月(国内)
質量 イヤホン 4.5g(片耳)
充電ケース 51.9g
サイズ 充電ケース 55.5×55.5×22mm
快適性 左右独立受信
ノイズキャンセリング ○ (Personalized ANC/Environment adaptive ANC)
最大40db
外音取り込み
アプリ対応 ○ (Nothing X
防水防塵 IP54(イヤホン)/IP55(ケース)
ワイヤレス充電 ○ (Qi、 最大2.5W)
急速充電 10分充電で最大1.25時間再生(ANCオンの場合)
Bluetooth Bluetooth 5.3
バッテリー イヤホン単体 〜6.3h(ノイキャンOFF)
〜4h(ノイキャンON)
イヤホン+充電ケース 〜36h(ノイキャンOFF)
〜22.5h(ノイキャンON)
音質 コーデック SBC/AAC/LDAC/LHDC 5.0
ドライバー 11.6mm ダイナミックダイアフラム(グラフェン+ポリウレタン)
周波数帯域 – 24bit/192 kHz
インピーダンス 非公開
カラバリ ホワイト
Nothing Ear (2)
Nothing

Nothingの躍進

ワンプラス(OnePlus、 万普拉斯)の共同創業者カール・ペイ(裴宇)が英国で立ち上げたNothingは、 斬新なデザインと体験を重視したユニークな仕掛けを武器に、 わずか4つの製品でユーザーの定評を得ました。 特に第一弾となる 「Nothing Ear (1)」 は、 美的価値を追求した筐体に18,500円(税込)という価格で業界に衝撃を与えています。

調査会社Canalysによれば、 2022年第1四半期における完全ワイヤレスイヤホン市場の32%をアップルが独占しており、 サムスンが9%、 シャオミ(小米科技)が7%と続きます。 初代 「AirPods」 の登場から6年が経つ今でさえ、 この市場にはアップルを除く主要なプレイヤーが存在しません。

ワンプラスでスマートフォン開発に携わってきたペイが一転、 ワイヤレスイヤホンに傾倒する背景にはこうした事実がありました。 そしてNothing Ear (1)は、 音質よりもデザインと価格にマーケティングの重きを置くことで、 他の製品との差別化に成功したのです。

デザインから機能性へと軸を移した  「Nothing Ear (2)」  は、  アップル一強のワイヤレスイヤホン市場を崩せるか?

PHOTOGRAPH BY KUJO HARU

かつてのワンプラスも同様の戦略を採り、 程良い価格に魅力的な性能を備えたスマートフォンで評判を得ていました。 ところが新規メーカーの参入で市場が飽和するにつれ、 端末は高価になり、 スペックも均一化されてしまいました。 当初の熱気は、 今や見る影もありません。

Ear (2)の価格に不安を抱いたのは、 Nothingがワンプラスと同じ道を辿るのではないかと思ったからです。 そして少なくともペイは、 価格から音質、 そして機能性へと意識を移しているように思えます。

Nothing Ear (1)
NOTHING

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Ear (1)のデザインを継承

デザインから機能性へと軸を移した  「Nothing Ear (2)」  は、  アップル一強のワイヤレスイヤホン市場を崩せるか?

PHOTOGRAPH BY KUJO HARU

正直なところ、 Ear (2) の見た目は先代とほとんど変わりません。 基盤まで丸見えのスケルトンデザインはNothingの製品に共通する特徴で、 同製品最大のアイデンティティです。

アクリル製のケースは純白の筐体と見事にマッチしており、 素材以上の高級感を演出しています。 このケースを美しく保つには相当の努力が求められるでしょう。

実はケースもわずかに小さくなっていますが、 体感上の差はほとんど感じません。 むしろEar (1)を使っているユーザーの多くは、 手にした時の軽さに気づくはずです。 ケースはマグネットで開閉するようになり、 不意に中身がこぼれ落ちる事故も起きにくくなりました。

Ear (1) Ear (2)
モデル
ケースサイズ 高さ: 58.6 mm
幅: 58.6 mm
厚さ: 23.7 mm
高さ: 55.5 mm
幅: 55.5 mm
厚さ: 22 mm
ケース重量 57.4 g 51.9 g
イヤホンサイズ 高さ: 28.9 mm
幅: 21.5 mm
厚さ: 23.5 mm
高さ: 29.4 mm
幅: 21.5 mm
厚さ: 23.5 mm
イヤホン重量(片方) 4.7 g 4.5 g
デザインから機能性へと軸を移した  「Nothing Ear (2)」  は、  アップル一強のワイヤレスイヤホン市場を崩せるか?

側面にはペアリング用ボタンとType-C端子がついている。 PHOTOGRAPH BY KUJO HARU

Ear (2)には、 3対のイヤーチップ(サイズ別)と、 充電用のUSB-Cケーブルが同梱されています。 Qi規格のワイヤレス充電に対応し、 Nothing Phone (1)をはじめとする対応機種なら、 スマートフォンの背面に充電ケースを置くことでおすそわけ充電ができます。

デザインから機能性へと軸を移した  「Nothing Ear (2)」  は、  アップル一強のワイヤレスイヤホン市場を崩せるか?

給電が始まるとNothing Phone (1)の背面が独特のパターンで光る。 Nothing製品を揃える最大の見返りと言っていい。 PHOTOGRAPH BY KUJO HARU

Ear(1)はケース込みで最大34時間の再生が可能でしたが、 Ear(2)では 36時間とわずかに伸びています。 イヤホン単体のバッテリー持ちも最大5時間から 6時間に向上しました。

高速充電にも対応しており、 アクティブノイズキャンセリング(ANC)がONの場合、 10分の充電で最大1.25時間の連続再生が可能です。

イヤホンはイヤーピースを着脱できるカナル型で、 質量は片耳約4.5g。 防塵防水性能はIP54準拠のため、 (ないとは思うものの)風呂場や水中での使用には不向きです。

Ear (1) Ear (2)
バッテリー イヤホン:最大5時間
ケースを含めた合計:最大34時間
イヤホン:最大6時間
ケースを含めた合計:最大36時間
防塵防水性能 IPX4 IP54(イヤホン)/IP55(ケース)

イヤホン操作をアプリでカスタマイズ

Ear(1)が静電容量式のタッチセンサーを採用していたのに対して、 Ear(2)はイヤホンのステム(軸)を指先でつまむプレスコントロールになりました。 欲を言うなら、 AirPods Proのように確かな触覚のフィードバックがあれば…と感じます。

ともかくこのプレスコントロールによって、 曲の再生/一時停止や、 前後の曲にスキップするといった操作が可能になります。

デザインから機能性へと軸を移した  「Nothing Ear (2)」  は、  アップル一強のワイヤレスイヤホン市場を崩せるか?

ステムの下端を指先でつまみ操作する。 コントロール範囲はややシビア。 PHOTOGRAPH BY KUJO HARU

イヤホン操作
  • 1回押す
    再生/一時停止、 通話応答/切断
  • 2回押す
    前/次の曲にスキップ/音声アシスタント、 通話の拒否
  • 3回押す
    前/次の曲にスキップ/音声アシスタント
  • 長押し
    ANC・外音取り込みモードの切り替え/音量を上げる/下げる/音声アシスタント
  • 2度押して長押し
    ANC・外音取り込みモードの切り替え/音量を上げる/下げる/音声アシスタント

コンパニオンアプリ 「Nothing X」 を使えば、 各操作に割り振る機能をカスタマイズすることができます。 同アプリではイコライザーの調整やノイズキャンセリング/外音取り込みモードの切り替え、 バッテリー残量の確認も可能です。

ただし、 アプリから音楽の操作ができない点は気になります。 音楽を再生するには、 イヤホンの柄をつまむか、 端末で音楽アプリを開くか、 音声アシスタントを呼び出すかの3択です。

幸いなことに、 Ear(2) は複数の端末と同時に接続することができます。 スマートフォンで音楽を聴きながら、 別の端末で電話に出ることも可能です。

Nothing X

Nothing X

Nothing Technology Limited無料posted withアプリーチ

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強化されたノイズキャンセリング

Ear(2)のステム上部に搭載された3つのマイクは、 通話だけでなくアクティブノイズキャンセリング(ANC)の品質にも欠かせません。

Nothing Xアプリでは、 ANCの強弱を 「高」 「中」 「低」 「アダプティブ」 から選択可能。 アプリ上でテストを行うと、 ノイズキャンセリングをパーソナライズできる機能もあります。

アダプティブモードは外環境に応じて自動的にANCの強度を調節する機能で、 最大40dBまでの騒音をカットすることができます。 ANCの強度は、 音楽がなければ相手の言葉が聞き取れる程度。 決して強いとは言えませんが、 バッテリー消費が抑えられる恩恵もあって良い塩梅に思えます。


通話性能では独自の 「Clear Voice Technology」 を強化。 3つのマイクにAIノイズ低減アルゴリズムを使って、 風切り音をはじめとする騒音への耐性を高めています。

バランスのとれた音色

Ear (2)はBluetooth 5.3準拠で、 コーデックはSBCとAACに加えて、 LHDC 5.0をサポート。 LHDC 5.0は最大192kHz/24bitのハイレゾ音源を伝送することができます。

問題は対応機種が限られていることでしょうか。 中国主導で開発された経緯をもつLHDC、 サポートするのはファーウェイ端末と一部のシャオミ製品、 そしてNothing Phone (1)。 国内におけるハイレゾ音源のコーデックはLDACが主流で、 スマートフォンの大半はそれに準じた仕様になっています。

デザインから機能性へと軸を移した  「Nothing Ear (2)」  は、  アップル一強のワイヤレスイヤホン市場を崩せるか?

PHOTOGRAPH BY KUJO HARU

ハイレゾ音源は諦めたとしても、 11.6mm・フルレンジのダイナミックドライバーが再現する音色は素晴らしいものです。 歌い手と楽器の一体感を保ちながら、 確かな音響空間を両立しているのがEar (2)の強み。 柔軟性に優れたポリウレタンと剛性のあるグラフェンを組み合わせることで、 Ear (1)よりもパワフルな低音を実現しました。

実際低域の存在感は増しており、 決して前に出てくるような強さはないものの、 十分な迫力と伸びが感じられます。 中高音域の解像度も高く、 特にボーカルの声はスンと貫くように聴こえるのが印象的。 突出した音域やパターンはなく、 極めて堅実な音色です。

さらにNothing Xアプリを使えば、 ユーザーごとに最適化されたプロファイルを作ることができます。 アプリ上で簡易的な自記オージオメトリーを実施すると、 可聴閾値に基づいてイコライザーカーブを自動的に調整する仕組みです。

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アップル一強の市場を崩せるか

Nothing Ear (2)は初代モデルから着実にブラッシュアップされており、 価値を下げるような欠点もなく、 非常に完成度の高いイヤホンです。

それでもなお、 冒頭で触れた価格に関する懸念は拭いきれませんでした。 Ear (2)は優れた音質とノイズキャンセリング性能を備えており、 この点で同価格帯のライバル製品を凌駕します。 しかしながら、 性能的に妥当な価格であることは、 ユーザーを惹きつけるための必要条件ではありません。

デザインから機能性へと軸を移した  「Nothing Ear (2)」  は、  アップル一強のワイヤレスイヤホン市場を崩せるか?

PHOTOGRAPH BY KUJO HARU

Nothingはこれまで、 個性的なプロダクトデザインでブランド像を確立し、 各国のマーケットにアピールしてきました。 特に日本市場はアップルが支配的な地位を築いており、 参入障壁が高かったと同社のマーケティング責任者は述べています。 彼らの製品が国内で一定の注目を集めた背景には、 2000年代のアップルを想起させる同社の販売戦略や、 共通するターゲット層があるでしょう。

Ear (2)の卓越したデザインと機能性は、 競争の激しいワイヤレスイヤホン市場で重要なアドバンテージとなります。 だからこそ今後Nothingがゲームチェンジャーとなるために、 コストの再考が求められるのです。

Nothing Ear (2)
Nothing

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