XPS 13 レビュー

XPS 13(2020)にデルの変革を学ぶ − 受け継がれる信念と新たな挑戦

デルとXPSがちょっと好きになれる、ホントの話。


デルという企業

今でこそ誰もが知る巨大企業のデル。しかしその起源は1984年と比較的新しいことに気付きます。一人の天才、マイケル・デルが立ち上げたその会社はわずか数年で世界に名声を轟かせテック業界の王座にまで上り詰めるのです。

36年前のコンピュータといえばサイズも価格も、そもそも概念自体今のそれとは全く異なります。企業向けの製品が普通で、一台が非常に高価で、個人向けのコンピュータという概念も今ほど浸透していなかった時代 − デルという企業が産声をあげたのは、そのような流れの最中でした。
当時の業界といえば、世界標準とまで謳われたIBMの独占市場です。しかし一つの企業が市場を長い間牛耳るということは、当然それに見合った代償を生じます。純正パーツだけで組み立てられたIBMのPCは非常に高価な上メモリ交換や周辺機器の調達に関してハードルが高く、押しつけられた大量の在庫はディーラーを苦しめる要因になっていました。

マイケル・デル(Michael Dell)、デルの創設者にして現最高経営責任者(CEO)。Image:Oracle PR

当時IBMのPCを使っていた大学生のマイケル・デル。初期のアップル製PC「Apple II」に始まり幼い頃からコンピュータに触れてきた彼は同分野に深い関心をもち、大学に入ってからは余ったPCを格安で引き取りユーザーの希望に応じたカスタマイズを施した上で販売する、というビジネスを編み出し稼ぐまでになります。
そんな彼なら、IBMが築いた”王国”の綻びにきっと気づいていたことでしょう。「IBMが作ったコンピュータの基準を打ち破り、新たな世界標準を作る」。医者になって欲しいという両親の希望を余所に、19歳の彼はわずか1,000ドル(日本円でおよそ10万円)の資本でコンピュータ会社を立ち上げるのです。

デル社が短期間で躍進した大きな素因として、当時PC業界では革新的だった「直販モデル」が挙げられます。デルは顧客から電話で直接注文を受け、発注した内容に合わせてコンピュータを組み立て出荷する方式、すなわち今でいうBTO(Build To Order=注文生産)システムを初めて確立しました。小売り業者や量販店といった中間業者を排して顧客に製品を直接売ることで、在庫費用の大幅な削減に成功したのです。
ユーザー毎の希望に沿ったカスタムメイドなPCという概念は当時衝撃をもって業界に受け入れられます。コスト削減により競合他社よりも圧倒的に安い価格を実現したデルのコンピュータは飛ぶように売れ、同時に多くのサプライヤーと契約を結ぶことができました。

さらにPCの直販という新たなビジネスモデルにおいて「インターネット」が重要なツールになることを見抜いていたデルは、ウェブサイトを通じて顧客の注文を受けるシステムをいち早く構築しました。現在では当たり前となったインターネット販売ですが、デル社はその草分け的存在と言えるかもしれません。2020年になった今もデルの製品はウェブストアを介しての直販が主で、同企業を語る上で最大の特徴となっています。
それまで企業向けコンピュータで覇権を握っていたIBMと全く異なるシステムを提示したデル。インターネットの急速な普及と共に成長を続け、2000年初頭には世界1位のパソコン出荷台数を記録するなど”テック業界の巨人”としての地位を我がものにしたのです。

1997Q1〜2001年Q3期までの世界市場シェア推移(パーソナルコンピュータ)。直販モデルを中心としながら急成長を遂げ世界トップシェアを獲得したデルは当時の業界に大きな衝撃を与えた。2001年のデル社プレゼン資料を元に作成

PCに対するデルの”信念”

デルのコンピュータに対する考え方は非常に興味深く、アップルやマイクロソフトといった他のPCメーカーのそれとは本質的に異なるものです。IBMを打倒したその時から、デルは「標準であること」、すなわち誰でも満足して使える盤石な製品を作り、提供することをどの企業よりも重視してきました。だから新しい技術が登場しても自社の製品にすぐ導入はせず暫く様子をみて、これならメリットになるという確信を得られた段階で初めて本格的に取り入れます。リスクをとって、自分から新しい技術、新しい分野を開拓することは決してありません。iPhoneもSurfaceも、デルは作らないし作らなかったのです。

この企業をみる上でもう一つ欠かせない視点が「カスタマーサービス」です。ユーザーが安心して使えるプロダクト、ユーザーが自由にカスタマイズできるシステム、ユーザーを助けるサポート体制。これほどまでユーザーの目線に強いウェイトを置くメーカーは他にありません。デルは顧客ごとに仕様の異なるPCの製品情報を一つずつデータベースへ登録し蓄積することで、個々人に最適化された製品サポートを実現しています。デルの売上の多くはBTOによる直販システムで得られていますが、そこで非常に高い評価を受けているのがこのデータベース管理サービスなのだとか。

デルという企業の立ち位置は、アップルのように革新を追い求む野心的なものでなければ、マイクロソフトのように多方面を切り開く創造者的なものでもありません。

計画的に一歩ずつ、できる限り多くの人々に受け入れられるプロダクトとサービスを熟成させる。常に出来上がった市場に参入して、着実に前へ進んでいく。それがこの会社のスタンスであり、デルのプロダクトに一貫して流れる”哲学”なのです。


Alienwareの買収により大衆向けのハイエンドPCブランドとして新たなスタートをきったXPS。
2011年に「Zシリーズ」として発売された「XPS 15z」「XPS 14z」(写真)の2機種はウルトラブックとしてのXPSを印象付ける象徴的な製品となった。

“企業向け”から”個人向け”へ

デルは一般消費者(コンシューマー)ではなく企業を主なターゲットとしてラインナップを展開し、成長してきたメーカーです。事実、2000年代に入り巨大テック企業としての地位を確立したデルは売上の大半を企業向けPCに依存し、コンシューマー向けPCは総売上の20%未満に留まっていました。

ですが2006年、ゲーミングPCメーカーとして名を馳せるAlienwareの買収をきっかけに、デルはコンシューマー向けPCの本格的な参入へと舵を切り始めたのです。この変革について、デルのコンシューマー部門担当のグルーゼン氏は当時ITmediaのインタビューに対してこう答えています。

一番重要なのは、コンシューマー市場はDellにとって成長機会であるということだ。IDCの調査によると、2007年度のPC出荷台数の構成比は、企業向けが23%、中小企業向けが37%、コンシューマー向けが40%となっているが、Dellの製品構成比率は大企業向けに偏っており、コンシューマーPCにこそ大きな成長機会があると確信している。

現在に繋がるXPSシリーズの系譜は、このとき誕生しました(正確には元々デルのゲーミングPCブランドであったXPSシリーズが、Alienwareに置き換えられる形でコンシューマー向けブランドに転身した経緯があります)。

今でこそWindowsPCの「顔」としてSurfaceと双璧をなすXPSですが、意外にもその歴史に目を向けるとPCブランドの中ではかなり浅い方だということに気付きます。そこからわかるのは、現在のXPSシリーズが「”デル製”コンシューマー向けPCの確立」という新たな挑戦を秘めたシンボリックなプロダクトであるということです(そしてこれが記事の主題でもあります)。


XPS 13(2020)

16:10 Infinity Edgeディスプレイ(13.4インチ)
第10世代インテルCoreプロセッサー(i5/i7)
512GB/1TB SSD
メモリ8/16/32GB
USB-C(Thunderbolt 3)×2
ヘッドホンジャック
microSDカードスロット
1.2kg(タッチ非対応)/1.27kg(タッチ対応)
Windows 10 Home
179,980円〜

XPSのデザインに見るデルの挑戦

これまで企業向けにビジネスを展開してきたデルが、コンシューマー市場でも存在感を示すためにはどうすれば良いか。XPSシリーズはそんな問いに対する一つの答えとも言えます。

最大の特徴は、これまで定評を得てきたデルの哲学思想がXPSにも確かに引き継がれている点です。常に熟成した市場へ参加して、計画的に前進する。MacBookや他の外資系PCを含め、時代ごとのスタンダードを漏らすことなく取り入れる。XPSはそういった思想で作られているからこそ、”ここがもったいない”と感じさせる隙がありません。

そうした努力の末、プロダクトとして一応の”完成”をみたのがXPS 13(2020)でした。安定した打鍵感のシザー式フルサイズキーボード、前モデルより17%大きいトラックパッド、タッチ対応のUHD+モニター(オプション)、Thunderbolt 3対応のType-Cポート×2に、SDカードリーダー、そして極め付けは約10時間(動画連続再生)のロングバッテリー。デルの考える2020年の”スタンダード”は、どこをとっても批判できない程高度なレベルに達した訳です。

Image:Engadget, Techtesters

加えて、これまでのデル製品と一線を画する方向性をあげるならば、それはデザイン性と言えます。企業向けの無骨でシンプルなデザインに端を発するデルのプロダクト開発を鑑みれば、XPSはウルトラブックとしての「デザイン」を初めて主題に据えた挑戦的ブランドでした。それは筐体のリモデリングに始まり、ここ数年では画面のベゼルレス(狭額縁)化を大きなテーマとしてXPSのデザインは洗練され続けています。

そして2020年モデルになったいま、デルの推すInfinity Edgeディスプレイはついに4面狭額縁を実現し、画面比16:10の大型ディスプレイになりました。アルマイト加工で光沢を放つエッジとシンプルかつスリムな筐体こそはXPSの魅力たる高級感・デザイン性の最たる部分と言えるかもしれません。

Image:Techtesters

まとめ:デルという会社を知るほど、XPSはもっと魅力的になる

Windows PCでおすすめは何か?と問われたとき、今の僕ならクラムシェルの「XPS 13」、はたまた2in1の「Surface Pro」の二択を提示することでしょう。コンシューマー向けブランドとして新たな一歩を踏み出してからおよそ10年、今やXPS 13はパフォーマンス、デザイン共に世界トップクラスのウルトラブックとしての地位を確かなものにしました。その魅力を支えているのは、創業由来デルが貫いてきた信念に基づく正当なデザインと、次世代のスタンダードを探る挑戦の証なのです。


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