ブランディングの課題
プロダクトブランディングは、Android端末が抱える共通の課題と言える。筐体やスペックに個性を持たせたり、ベースとなるソフトウェアをカスタマイズしたりと、各メーカー趣向を凝らしているのは承知の通りだ。
昔に比べ異なるOS間のハードルは大分下がってきたが、大量のiPhoneユーザーがAndroidに移行するような現象はいまだかつて起こったことがない。iPhoneよりスペック的に優れている端末は山ほど存在するのに。その本質を探るとき、ブランディングは避けて通れないトピックとなる。
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「OPPO Find X3 Pro」を象徴的に表すなら、それは「色彩」になるだろう。訴求点が飽和しがちなハイエンド端末において、これは強力なブランド要素となり得る。Find X3 Proは従来の256段階をはるかに超える10bitカラー処理により、10億色の表現を実現した。OPPOによれば、撮影から保存・表示まで全ての工程を10bitで処理できる世界初の端末だと言う。
写真好きを唸らせるカメラ
目で見た世界を忠実に再現するこのシステムは、高画質なカメラと10bit表示対応の有機ELディスプレイによって担保される。背面は5000万画素の広角、同じく5000万画素の超広角、望遠(1300万画素)、そしてマクロカメラ(300万画素)の4眼構成。広角と超広角は共に1/1.56型の巨大なセンサーを積んでいるのが特徴で、他機種のように画質の劣化を伴うことはない。
望遠は2倍光学ズームに対応し、デジタル倍率下でもノイズを極力抑えることに成功している。これらはスマートフォンにカメラ性能を求める人にとって十分満足できるポテンシャルを秘めていると思う。ユニークなのは4眼の一角を担うマクロレンズだが、最初の感動を超える印象は無いし、積極的に使う場面も見当たらない。
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動画撮影は広角・超広角共に4K60fpsに対応するが、撮影中にレンズを切り替えることはできない。強力な手ブレ補正を使うこともできるが、代わりに画質が1080Pに制限される点は留意したい。
ディスプレイはQHD+(3210×1440)の6.7インチ有機ELで、10億色の正確な色彩表示に対応している。120Hzのリフレッシュレートは場面に応じてレートを自動的に調整する可変式で、滑らかさを保ちながらもバッテリー消費を抑える優秀さだ。画面は最大で1300ニトまで明るくでき、日差しの強い日中でも画面が潰れないのはありがたい。
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色へのこだわり
Find X3 Proは客観的に見て正しい色を表示することだけでなく、ユーザーにとって最適な色を探すのにも長けている。設定項目に設けられた詳細な色補正機能は、他のメーカーや端末にない特徴と言っていい。
実施できる色覚テストは、与えられた色を直感で色相環に当てはめていくものだ。結果に応じて、最適な色補正をかけてくれる。OPPOが焦点を当てる色覚多様性は、今のところ多くの人にとって大した関心事ではないかもしれない。しかし実際は、プロダクト全体のブランディングにおいて無視できない役割を担っていると思う。
その他のスペックに関しても、流石はフラッグシップとあって優秀だ。12GBのメモリにSnapdragon 888、レスポンスに優れた画面内指紋認証と顔認証、4,500mAhに及ぶバッテリーの魅力に気づいてしまったら、他の端末に乗り換えるのは難しい。
さらにOPPO独自の急速充電規格では、65Wの電力供給によりわずか10分で40%までチャージすることができる。バッテリーシェアのほか、Find X2 Proでは非対応だったワイヤレス充電にも対応し、もはや付け入る隙はないと見える。
AQUOS R6やXperia 1 IIIのオルタナティブ
OPPO Find X3 Proは、定評を得て進化した最高級のカメラと、並々ならぬ色へのこだわりを持っている。その両方がこれまでにないクオリティーの撮影体験をもたらし、その分野に関心がある人を刺激するはずだ。
逆に言えば、そこに価値を見出せるか否かで11万8,000円という値段の意味合いも変わってくる。もちろん、奇抜なデザインも賛否の分かれ目になるだろうが、個人的にはニューモーフィズミックな、あるいは70年代SFに出てくる宇宙船のような質感と形状を愛している。
ところで、ライバルとなる高級機はいずれもカメラに自信ありだ。シャープのAQUOS R6やソニーのXperia 1 IIIあたりが候補に上がってくるだろう。この価格帯に至れば尚更、ブランディングの出来が購入に大きな影響を与えてくる。Find X3 Proがひしめくハイエンド端末の波から一歩抜きん出るには、「iPhone」や「Galaxy」に匹敵するアイデンティティの確立が重要かもしれない。
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