エレコム「ペーパーライクフィルム 文字用しっかりタイプ」

どんな人向け?
iPadでノートテイキングやライティングをする人、書き心地にこだわりたい人
良いところ
紙特有の沈み込みやとっかかりを再現し、正確な字を書くことができる
悪いところ
画質が低下する、イラストを描きたい人には向いていない
価格
2,190円(Amazon, 執筆時点)
ペーパーライクフィルムを選ぶ理由
iPadとApple Pencilをセットで使っている人は多いと思います。その中でも、特に授業でのノートテイキングや日記づけ、その他ライティングを主な用途とする人であれば、紙とは違う「硬い板の上に書いている」ような独特の書き心地に一度は困惑したはず。
僕のその一人でした。ルーズリーフとお気に入りのペンによるアナログなノート作成が染み付いていた僕にとって、この「書き心地の違い」はiPadによるデジタルなノートテイキングへ移行する上で大きな障壁だったワケです。
やはり紙に文字を書く時とiPadに書く時では、字体もペンの持ち方も全然違います。そして大抵iPadの字の方が汚いのです。
これがどうしても我慢ならなくて、iPadでも紙と同じような書き心地を実現できれば字も綺麗になるし、なにより気持ちよく書けると思いました。
ペーパーライクフィルム、これひとつで世界が変わる
これは魔法のフィルムだ
初めてペーパーライクフィルムを試したときは、本当に驚きました。素のiPadに書いている時のツルツル滑るような感じが全くなくて、ペンが取っ掛かるあの感じ、いわば紙独特の抵抗がしっかり再現されているのです。
では冒頭に述べたように、なぜ数々のペーパーライクフィルムをとっかえひっかえしてきたのか?
一口にペーパーライクフィルムといっても多数のメーカーから質感の異なる様々な製品が発売されています。その多くは普通紙の質感に寄せた作りになっていて、どれも完成度の高いものばかり。でもやっぱり本物の紙には及ばないというか、完全に同じ書き心地ではなかったんです。
ところが今回試したエレコムの文字用ペーパーライクフィルム(iPad Pro用)、これは間違いなく今まで使ってきた中で一番紙に等しい書き心地を再現している製品でした。それだけで、このフィルムは僕にとってかなり魅力的に感じられたのです。
エレコム「文字用ペーパーライクフィルム」を貼った様子
文字を”書く”ことに特化したフィルム
まず前提として、ペーパーライクフィルムにはイラストを「描く」ためのイラスト用フィルムと、文章を「書く」ための文字用フィルムがあります。
前者はペンタブ(特に液タブ)のような抵抗の少ない、アンチグレアでサラっとした質感を再現しているのが特徴ですが、後者は紙特有の強い抵抗(とっかかり)や沈み込みを再現したつくりになっているという点で大きく異なります。
そしてエレコムの「文字用ペーパーライクフィルム」は名前の通り「文字を書く」ことに特化したつくりをしています。書き心地について特筆したいのは、ノートに文字を書いている時の「ペン先が沈み込む」感覚をしっかり再現しているという点です。
多くのペーパーライクフィルムは、保護目的のフィルムで使われるゴリラガラスではなく「樹脂」をその素材に採用しています。表面抵抗の強い樹脂を使うことで、紙独特のとっかかりを再現しようとしているんですね。
ところが実際に何枚かの紙を重ねた上にペンで文字を書くと、ペン先が柔らかい紙の奥に深く沈み込むことであの「取っ掛かる」感覚が生まれることに気付きます。フィルムにはこの沈み込みがないから、「なんか違うなあ」という違和感がありました。
文字のとめはねまで丁寧にかける
その点エレコムのペーパーライクフィルムは優れていて、フィルムの厚みを活かしてこの沈み込みまで緻密に再現しています。イラストと違って、文字を書く場合は重めのタッチになりますから、こうした質感が書き心地の向上に直結するわけです。
素のiPadと大きく違うのは、文字の「とめはね」まで丁寧に書けることでした。ペン先に抵抗がある分、指先にある程度力を入れて丁寧に文字を書くことができるんです。後述する短所も含めてこのような特化型の製品が適さない人は少なからず存在すると思いますが、それでも使ったことがない人はまず一度試してみることを強くお勧めしたい、そんなフィルムです。
目を凝らすと若干のノイズが目立つ
代償もある
書き心地に特化したフィルムである分、当然代償はあります。大きいのは、画質の低下です。具体的には、若干の輝度低下と樹脂製のフィルムに特有のノイズが見られるといった感じ。普通に使う分には気にならないのですが、白に代表される明色系の背景ではこのようなノイズが映り込むこともしばしば。
もっと大きいのは、環境によって画面の見え方にムラが生じる点かと思います。次の2枚を見比べてみてください。

室内で使用した場合(イメージ)
屋外で使用した場合(イメージ)
上は室内で光の条件を変えて撮影したものですが、実際もおおむねこのような感じになります。表面のザラザラしたシートを貼っているため、当たった光が乱反射して画面が白っぽく見えるんですね。
室内光であればクリアに画面が見えますしほとんど気にならないのですが、太陽光の下ではこの傾向が強くなります。室内でも、太陽光が差し込むような状況では画面が見えづらくなるケースもあるでしょう。
これがどうしても耐えられない、という人にはペーパーライクフィルム全般をおすすめしません。高画質・広色域が魅力のiPad、その強みをあえて潰すような真似をしているのですから、大きな短所に感じられるのは当然のことです。
ボクも書き心地の向上というメリットと若干の画質低下というデメリットを天秤にかけて、前者がより大きかったから選んだまでです。
エレコム「文字用ペーパーライクフィルム」なら、写真の現像など正確な色域が求められる作業も問題なくこなせる
ただエレコムの「文字用ペーパーライクフィルム」、この製品に限って言えるのは、ペーパーライクフィルムの中でも画面のノイズがかなり抑えられている部類だということと、光の乱反射を防ぐ「反射防止加工」が施してあるということです。
その分、他の製品と比べて先述のデメリットが幾分抑えられていることがわかります。iPadの強みである画質、その低下をできる限り避けたいと思っていた僕でも「これなら許容できる」という感じの使用感でした。一度ペーパーライクフィルムで挫折したという人も、このフィルムならもう一度試してみる価値がありそう。
触り心地はどうか
触り心地についても感想の分かれるところかと思われます。ペーパーライクフィルムはどれも表面がザラザラしているので、指で触れた感覚はとても滑らかな紙ヤスリを触っているような感じになります。
ペンと一緒で、指によるタッチ操作でも抵抗を感じる
特にスワイプ時は「サッ、サッ…」という摩擦音がする程度の抵抗があります。僕はこの独特の感覚が気持ち良く感じるくらいに慣れてしまったのですが、素のiPadや普通のフィルムとは大きく異なる感触ですから違和感を感じる人は多いはずです。
九条ハル
Apple Pencilによる文字書きよりタッチ操作の方がはるかに多い! って人には不快に感じられるかもしれないね。
一方で、油分によるベタベタがなく指紋がつきにくいというのは大きなメリットでしょう。素のiPadやガラスフィルムでは使っているうちに指の油分がすり減って、いつの間にか指滑りが悪くなっている…なんてことも少なくありませんが、ペーパーライクフィルムではこのような事が一切起こらないのが良いですね。
PHOTOGRAPH BY KUJO HARU
パッケージをチェック
最後にパッケージの内容について少し述べておきましょう。エレコムのiPadフィルムでは共通の仕様だと思いますが、パッケージとしてはフィルム本体の他にクリーニングクロス、ホコリ取り用シールと気泡を抜くための厚紙が付属しています。
付属品。左から、クリーニングクロス、気泡を抜く為の厚紙、ホコリ取り用シール
フィルムは透明度が高く、薄い。樹脂製のシートなので非常に貼りやすい
フィルム本体は透明度が非常に高く、そして薄いです。樹脂製のシートなので柔軟性に優れ、フィルムを湾曲させながら徐々に貼ることができます。そのため硬いゴリラガラスのフィルムと違って、初心者でも比較的簡単に、そして綺麗に貼れると思います。
エレコムのiPad用フィルムはほかにも
エレコムからは用途に応じてiPad用のフィルムが豊富にラインナップされています。例えばペーパーライクフィルムだけでもなんと4種類、イラスト用・文字用からケント紙タイプまで全て揃っていて驚きです。
IMAGE BY ELECOM
今回レビューしたのは文字用の「しっかりタイプ」ですが、イラストがメインという方や絵画やデッサンで線画を意識したいという方は他のタイプを試してみると良いかもしれません。
最高の書き心地に代わるものはない
エレコムの文字用ペーパーライクフィルム(しっかりタイプ)はこれまでに試した同様のシートの中で最も紙に近い質感を再現しており、同時にApple Pencilを用いたライティングの多い僕にとってペーパーライクフィルムを使うメリットはその他のデメリットより大きいものでした。
PHOTOGRAPH BY KUJO HARU
何より「iPadとApple Pencilでライティングがしたい!」というワクワク感を想起させてくれるのはこのフィルムならではの魅力だと感じます。iPad Proについては光沢から非光沢、ペーパーライクまで様々なフィルムを使ってきましたが、ようやく一つの製品に落ち着いたかな…という安心感を覚えています。
「書くこと」に特化したつくりになっているが故、犠牲も多く人を選ぶ製品ではありますが、書くことが好きな方(特にライティングの多い学生さんなんか)には是非一度試してみてほしいアイテムです。