iPad Air 4 (2020)は絶妙な削ぎ落としで価格と性能を両立させた一台:実機レビュー


PRODUCT REVIEW

新しいiPad Airは現行のProモデルに似た美しいデザインながら、性能面の絶妙な削ぎ落としでコストカットを実現した。「Air」の文字通り全ラインナップ中で最も軽い機種になり、Proにないポップなカラバリも新たな魅力になっている。最安で62,800円とProモデルより4万円近く安いのは良いが、64GBのストレージは非実用的で、購入するなら2万円弱足して一つ上のモデル(256GB)を選択するのが無難だろう。—— 第4世代iPad Air(2020)の実機レビュー。

iPad Pro Magic Keyboard レビュー

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新しいiPad Airは現行のProモデルに似た美しいデザインながら、性能の絶妙な削ぎ落としでコストカットを実現した。「Air」の文字通り全ラインナップ中で最も軽い機種になり、Proにないポップなカラバリも新たな魅力である。最安で62,800円とProモデルより4万円近く安いのは良いが、64GBのストレージは非実用的で、購入するなら2万円弱足して一つ上のモデル(256GB)を選択するのが無難だろう。—— 第4世代iPad Air(2020)の実機レビュー。

Proとの違いは気にならない?

絶妙な削ぎ落とし

デザインを刷新した第4世代iPad Airの外観は、一見するとiPad Proと相違ないように見える。いや、よく見れば若干の違いはある。例えばiPad Airが背面に12MP広角のカメラを一つだけ載せるのに対して、iPad Proのリアカメラは広角・超広角の2眼構成。ベゼルもAirの方が若干太いようだが、遠目で見るぶんにはわからない。

そもそも、そういった感覚は普段Proを触っているからこそ生まれるもので、最初の一台がiPad Airであったとしたら気にすることもないのだろう。いずれにせよ、最新のProモデルに通じる美的思想を有しながらも、3万円以上安価に手に入れられるiPad Air(2020)の購入価値は大きい。

iPad Air(2020,左)とiPad Pro(2020,右)。一見殆ど同じ見た目をしている
指紋認証(Touch ID)内蔵のトップボタンはクリスタルカバーでコーティングされている

一つ大きな変化は、iPad Proがフロントカメラによる顔認証(Face ID)を搭載していたのに対し、iPad Airではトップボタン式の指紋認証(Touch ID)を採用した点だ。スマートフォンの場合と違って、タブレットと顔認証の相性はそう悪いものでもない。ただしことiPadOS(とiOS)に限っていうなら、Touch IDの方がログイン方式としてはよりスマートと言えるだろう。

カメラと睨めっこして、鍵が開いたのを確認して、スワイプする…Face IDの面倒な操作を思い返せば、指でボタンを押し込むだけのTouch IDが幾分効率的に思える。セキュリティーと効率性を天秤にかけたとき、大半の人は後者を選ぶのだ。

横向き(左の指)

縦向き(右の指)

ボクはiPadを横向き(ランドスケープモード)で使うことが殆どだが、縦長のWebページやPDF書類を見るときは縦持ちにすることもある。なので指紋は左右両方の手指を登録しておいた。無印iPadの伝統的なホームボタンに勝るとも劣らない使い勝手、これは中々気に入りそうだ。

iPad AirとiPad Proの性能比較

モデル iPad Air(2020) iPad Pro(2020)
CPU A14 Bionic チップ A12Z Bionic チップ
メモリ 4GB 6GB
リアカメラ 広角 12MP f1.8 29mm 広角 12MP f1.8 29mm
超広角 10MP f2.4 15mm
LiDARスキャナ
ロック解除 TouchID(トップボタン式) Face ID
画面サイズ 10.9インチ 11インチ
ディスプレイ 耐指紋性
フルラミネーション
反射防止
広色域(P3)
True Tone
耐指紋性
フルラミネーション
反射防止
広色域(P3)
True Tone
Pro Motion
スピーカー 2(水平配置) 4
重量 458g(Wi-Fi) 471g(Wi-Fi)
iPad Pro(左)とiPad Air(右)

カメラ

カメラは必要十分である。iPad Pro(2020)のレビューではProモデルの特権とも言える「超広角カメラ」の存在意義に触れた。ご都合主義の漫画の主人公のように、はじめから恩恵を授かっているような状況でそれを活かそうと思えば、いくらでもやりようはある。

すなわち10MPの超広角カメラも、より正確な空間把握を可能にするLiDARスキャナも、あったらあったで使いようはあるし、便利なのだ。逆に言えば、そうした特典がなかったとて特別困ることもない。iPad Airを使う中で、LiDARを憂い、カメラ性能に歯痒い多いをする場面など微塵もないのである。

Proモデルと同じアクセサリ類が使えるのは嬉しい

インターフェース・スピーカー

iPad Airの使い勝手は、Proモデルのそれと殆ど変わらない。ワイヤレス充電対応の第2世代Apple Pencilが使えるし、これまでProでしか使えなかったアクセサリ類が使えるし、USB-Cの恩恵を受けることだってできる。

スピーカーはiPad Proが四方に一つずつ、計4つの構成に対しAirは2つと少ないが、横向きで左右に一つずつ配置されており、ランドスケープモードでの使用を想定していることがうかがえる。iPad Pro(2020)と簡単に聴き比べてみたが、音質・音量の双方でほとんど劣っていないのは驚きだった。では一体どれだけの人がiPadで素の音楽を楽しむのか?…と言われたら閉口せざるを得ないのだが。

ProMotionの有無がポイント

ディスプレイ性能

iPad Proと同じLiquid Retinaディスプレイを採用しているが、リフレッシュレート120Hzの「ヌルヌル」画面(ProMotion)ではない。その妥協に納得はいくが、11インチクラスの画面サイズになるとそうも言っていられない。

Video:Sin-Space(シンスペース)

今やProMotionの存在は、全ラインナップ中であえてProを選ぶ最大の理由となっている。スローモーションで見るとその違いがよくわかるだろう。肉眼ではどうか? 特に効果を実感できるのは、Apple Pencilでライティングをする場面だ。

ディスプレイ性能の差はApple Pencilの描き心地に現れる

素早くApple Pencilを動かすような操作、例えば手書きのメモをとったりドローイングで線引きしたりすると、筆跡がペン先に遅れて追いつく印象を受ける。Proの滑らかさに慣れてしまうと、この僅かなラグを歯痒く感じてしまう。この違和感は、イラストを描いている時よりも、むしろ文字を書いている時に起こる。ライティングの性質上、ペン先を常に速い速度で動かす必要があるからだ。

そう考えると、ProMotionの効果を最も実感できるのは、実のところ学生やビジネスマンなのかもしれない。少なくとも、120HzリフレッシュレートのiPad Proに慣れ親しんだボクからすれば、iPad Airで純正メモやGoodNotesを使うのはこの上ないストレスだった。

パフォーマンス

とは言え、60Hzのディスプレイが必ずしも悪いわけではない。ご多分に漏れず、Proモデルを使ったことがない人がそれを惜しむことはまずないだろうから。それに処理が軽くなる分、パフォーマンスの向上も見込める。

そもそも、新しいiPad Airは現行のiPad Pro(2020)よりも優れたCPUを積んでいるのだ。Airに採用されたA14 Bionicチップは、最新のiPhone 12シリーズと同等のもの。GPU性能の強化が顕著で、シングルコア性能でiPad Proに勝る実力をもつ。

CPU・GPU性能比較(GeekBench 5)

Source: TechCrunch

ただし、iPad Pro(2020)が全モデル6GBのRAMを搭載しているのに対し、iPad AirのRAMは4GBである。性能面でProの方が有利に働くのは、Photoshop・IllustratorやLuma Fusionのようなグラフィック処理を必要とするアプリだ。これらのアプリを頻繁に使わないのであれば、Airの性能でまず満足できるだろう。

  • デザイン・基本性能はiPad Proとほぼ共通
  • Proとの最大の違いはディスプレイ性能
  • パフォーマンスはAirの方が勝る
Proは買えないけど…

他モデルからの乗り換えはアリ?

他のモデルと比べてみよう。これまで発売された全てのiPad、iPad mini、そしてiPad Airと比べて大きく異なるのは、「第2世代Apple Pencilに対応する」こと、そして「USB-Cを搭載している」ことの2つだ。これまでも述べてきたように、インターフェース・周辺機器はデバイスの使い勝手を大きく左右する要素である。

第2世代Apple Pencilはダブルタップによるジェスチャー切り替え、ワイヤレス充電に対応する優れもの。

現在、第2世代Apple Pencilに対応する機種はiPad Pro、そして第4世代iPad Airだけだ。従来のスタイラスは後端のLightning端子をiPad本体のポートに直接挿して充電する必要があったが、第2世代ならiPadの本体側面に磁力でくっつけるだけでワイヤレス充電が可能になる。

さらに第2世代Apple Pencilは本体をダブルタップすることでツールの切り替えができる。例えばペンを持ったままペンと消しゴムを自在に切り替えられるといった、効率的でスマートな使い方が実現するのだ。


関連: 第1世代・第2世代Apple Pencilの使い勝手を比較

現在iPadの全モデルでApple Pencil(スタイラスペン)を使うことができるが、対応するApple Pencilの世代に違いがある。 記事をみる

iPad Proと最新のiPad Airが搭載するUSB Type-Cは、従来のiPadに採用されていたアップル独自規格のLightningと異なり、複数のデバイスで共用する統一規格である。LightningポートはiPhoneが備える端子と共通。故に充電ケーブル類も同じものを流用することができるが、iPhoneと異なりクリエイティブな作業が多くなるという性質上、Lightningは利便性の面でユニバーサルな規格のUSB-Cに劣る場面がある。

例えばカメラで撮影した写真をiPadに取り込んで編集したい、あるいはUSBメモリ等でデータのやり取りを行いたいなら、Type-Cポートを搭載するiPad Pro/Airが有利に働く。対応するカメラであれば、Type-Cケーブルで本体と接続するだけで、直接写真を取り込むこともできる。

USB-Cの採用により拡張性の向上が期待できる

やや大袈裟に言うなら、この2点だけでも買い替えを検討する決定的な理由になるだろう。とはいえ、iPadを単純にコンテンツビューアーとして使っている人から見れば、それほど魅力的にはうつらないかもしれない。

もしあなたが第2世代iPad Airや無印のiPadを使っているのであれば、それでも買い替えの価値はある。一つはディスプレイ性能が飛躍的に進化していること、そして強化されたプロセッサーも根拠の一つだ。今使っているiPadで、アプリのダウンロードやブラウザの読み込みにもたつきを感じるのであれば、第4世代iPad Airは良い選択肢になる。ただし、CPU性能だけを気にするなら最新の第8世代iPadを選ぶ手もある。

64GBは非実用的

選ぶなら256GBモデルを

第4世代iPad Airは現行のiPad Proに近いスペックを有しながら、最安62,800円(税別)からの魅力的な価格構成を保っている。残念なのは、肝心な吊るしモデルのストレージが64GBしかないところだ。アップルはiPhone 12シリーズでついに時代遅れの64GBモデルを廃止したのに、なぜ最新のiPad Airに残したのだろうか。

率直にいって、1TBのiPad Proと同じように、64GBのiPad Airは多くの人にとって非実用的であろう。iPadのストレージについて述べた記事の通り、クラウドベースのファイル管理は理想のように上手くいかないのである。

となれば、一つ上の256GBモデル(税別79,800円)を選択するのが無難と言える。どうしてもセルラーモデルにしたいと言うなら、これに15,000円足して94,800円 —— 安くない買い物だ。

ストレージで補足すると、iPad Proで提供される512GB、1TBモデルはなく、256GBが最大となっている。実際は、iPadをメインコンピューターとして使わない限り、256GBで十分満足できることだろう。

総括するに、Macやその他PCのお供として「サブ」なコンピューターを求めているなら、現状iPad Airが最良の選択といえそうである。唯一無二のコンピューターとして、iPad Proに価値を見出すのであれば、その選択も悪くない。留意すべきは、近いうちにiPad Proの新型が登場するかもしれないということ。iPhone 12同様、Proのアイデンティティーが揺らいでいるような現状が、そう長く続くとも思えないのだ。

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