13.3インチ、アスペクト比4:3、そして最大の特徴である「折り畳める」ディスプレイ。Samsung「Galaxy Fold」とHuawei「Mate X」に始まったフォルダブルデバイスのトレンドが、ついにPCの領域へと進出しつつあります。
今月米ラスベガスで開催されたCESで、Lenovo(レノボ)がフォルダブルPC「ThinkPad X1 Fold」の詳細を発表しました。コンセプトデバイスではなく、れっきとした商用モデルです。
フォルダブルPCについては、昨年Microsoft(マイクロソフト)がヒンジ式の折り畳みPC「Surface Neo」の2020年発売を発表し、同時にフォルダブルPC向けにソフトウェアをカスタマイズした「Windows 10X」のリリースを予告していました。「ThinkPad X1 Fold」については、まずWindows 10を搭載する先行モデルが発売され、Windows 10Xの登場に合わせて対応モデルが登場するとのことです。
Lenovo「ThinkPad X1 Fold」。Image:Lenovo
ThinkPad X1 Fold -スペック-
OS | Windows 10X /10 Pro |
CPU | インテルCoreプロセッサ (Lakefield)、8GB LPDDR4メモリ、最大1TB NVMe SSD |
ディスプレイ | 13.3インチ(4:3) フレキシブル pOLED (プラスチック有機EL) |
解像度 | QXGA(2048×1536) 折りたたみ式有機EL |
メモリ(RAM) | 8GB |
ストレージ(ROM) | 最大1TB PCIe SSD |
WWAN | 5G |
本体サイズ | 約299 x 236 x 11.5mm (カバーを除くと7.8mm)、畳んだ状態で158.2 x 236 x 27.8mm |
重量 | 999g (革カバー兼スタンド含む) |
発売時期 | 2020年中頃 |
発売予定価格 | 2499ドル(Win10搭載モデル) |
折りたたむと約16×24cmに。スタイラスも使えるタブレットPC
ThinkPad X1 Foldの構造は一面の大きなディスプレイが正真正銘折り畳まれる、というもので、谷折り式のGalaxy Foldと原理は同じ。2つのディスプレイをヒンジで繋いだブック型のSurface Neoとは同じフォルダブルでも設計思想が異なります。
このタイプのデバイスには繰り返しの使用に耐えるだけの強度があるか否かという疑問がありますが、X1 Foldは衝撃に強いカーボンファイバーを支持層に採用し、ディスプレイについては折り畳み・耐久性テストを行いいずれもクリアしています。
折りたためるディスプレイが最大の特徴。Image:Lenovo
完全に開いた状態ではワイヤレスキーボードを接続して大画面のPCとして使ったり、はたまた標準付属のスタイラスペンを用いてタブレット的に使うことも可能です。
折りたたんだ状態は持ち運びに適しているだけでなく、9インチ型のデュアルディスプレイPCとして使うことだってできます。
さらにX1 Foldには専用のBluetoothキーボードが用意されており、折りたたんだ状態でこれを下画面に載せると、通常のクラムシェルPCと同じように物理キーボードとして使うことができます。Suface Neoのそれに近いですが、やはりPCとして使う以上物理キーボードの需要は無視できないのでしょう。実際、長時間使うとなるとソフトウェアキーボードでは体験の質低下が容易に想像されます。ここはとりわけ称賛したいのですが、なんとX1 Foldの専用キーボードは、本体からのワイヤレス充電に対応しています。つまりはバッテリーの交換や充電が不要な訳で、非常によく考えられた実用的な設計になっていることを伺わせるものです。
専用カバーをつけて完全に折りたたんだ状態。Imgae:Lenovo
レザー素材の専用カバーはスタイラスのホルダーを備えており、またスタンドとしても機能します。カバーをつけた状態なら、X1 Foldを開いた状態でも自立できるのが嬉しいですね。またX1 Foldを折りたたむと間に若干の空間ができ、そこに専用のワイヤレスキーボードを収納できる設計になっているようです。
Image Source:Engadget
SoCにLakefieldを採用、フルWindwosが動く
ThinkPad X1 FoldはタブレットスタイルのWindowsに多いARMプロセッサ(WoA:Windows on ARM)ではなく、IntelのCoreプロセッサを採用しているため通常のPCと同じようにフルWindowsが動作します。すなわちモバイルPCでありながら、ARM版Windowsのように使えるアプリに理論上の制限がないのがX1 Foldの大きな強みです。
モバイルSoCとしての機能性の強化には、新たに搭載される Lakefieldプロセッサが貢献しています。Lakefieldはモバイル向けのSoCに匹敵するスリープ時消費電力の低さや長いバッテリー駆動時間を特徴としており、X1 Foldの場合だとバッテリー持続時間は最大11時間に達するとされています。ThinkPad X1 Foldはモバイル向けとも言える新世代のIntel プロセッサを搭載する最初のデバイスの一つとして発売される予定です。
ThinkPad X1 Fold。Image:Lenovo
極太ベゼル、なんとかならなかったのか?
ThinkPad X1 Foldは商用モデルとして世界初のフォルダブルPCとなりましたが、その一方で課題もたくさん見受けられます。わかりやすいのはディスプレイ周囲を埋め尽くす太いベゼルですね。設計上の制約があるとはいえ、発想がクールなだけにもったいない、と思わざるをえないポイントではありますよね。
時代錯誤の極太ベゼルは個人的にちょっと気になる…Image:Lenovo
加えて、持ち運びを意識してのフォルダブルという選択ならば全体の重量にも疑問が残ります。X1 Fold本体とカバーを合わせて 1kg 。一般的なクラムシェルPCより軽いとはいえ、PCとして使うなら別途キーボードが必要になります。タブレットとして使うにもやや重たい感じがしますし(例えば最新のiPad Pro 11インチは本体のみで468g)、全体の重量を考慮すると日常的に持ち運ぶデバイスとなり得るかは未知数と言わざるを得ません。
ThinkPad X1 Foldと専用キーボード。Image:Lenovo
それとフォルダブル故の耐久性に対する不安は少なからずあります。Lenovoによれば厳しい耐久性テストをクリアしたとされていますが、「曲がるディスプレイ」という構造的脆弱性を抱えている以上、例えば誤って地面に落としてしまった場合など種々のアクシデントにX1 Foldがどこまで耐えられるのかは実際に使ってみないとわからないでしょう。
プロトタイプだが、実用性も確保
まとめると「ThinkPad X1 Fold」はPCとしては初のフォルダブル構造を採用し、モバイル向けの新プロセッサ Intel Lakefieldを搭載するなどいわばプロトタイプ的性格の強い製品ですが、商用モデルとして発売するだけあって「ThinkPadブランド」に恥じない実用性はある程度確保されている印象があります。ただし折りたたんだ時の時代錯誤的な分厚さや実際にこれを日常的に使う場面を想像すると、やはりこのカテゴリーはまだ発展途上なのかなと結論づけたくなるかも。
2in1としての新たな使い方を提案する画期的なデバイス。Image:Lenovo
ただまあ、いくつか改善点はあるものの、タブレットとPCの「2in1」としての新たな使い方を提案するX1 Foldのコンセプト自体に大きな価値があるのは確かです。今後各メーカーから同じような製品がが発売され、デザインも更に洗練されていくことでフォルダブルPCが 2in1 のカテゴリーを築いていくことを期待したいところです。少なくともガジェット好きのギークには間違いなく「刺さる」製品、ThinkPad X1 Foldを出してくれたLenovo(レノボ)に感謝です。
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