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Dell XPS 15(2020) —— ベゼルレスが示すテクノロジーと生活の調和


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XPS(2020)のプロダクトデザインから、デルの性格を読み解きます。こちらを読んでから本記事を読むと、より一層内容を楽しんでいただけます。記事をみる

デルから発表された新しい「XPS 15」と「XPS 17」は、XPS 13(2020)で採用された4面狭額縁のベゼルレスデザインを継承する刺激的なモデルになりました。2015年に「InfinityEdge」テクノロジーでPCにベゼルレス化の波をもたらしてから5年、デルの試みはようやく一定の完成をみたのです。

スマホやラップトップ、あらゆるデバイスにおいて「ベゼルレス化」は今やテクノロジー全体の一大トレンドです。しかし「額縁を小さくする」ことに特別な価値を見出されるようになったのはここ十年の話で、「iPhone」に端を発するスマートフォン発展の歴史と共に歩んできた経緯があります。

だとすれば、2020年になった今、各メーカーとエンジニアが額縁をたった数mm削るために苦心しているのは何故でしょうか。今回はリフレッシュされた「Dell XPS 15」(2020)にスポットを当てながら考えてみたいと思います。

Image:Dell
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XPS 15(2020)

15.6インチ
16:10 Infinity Edgeディスプレイ
第10世代 Intel Core i5/i7
SSD 512GB/1TB/2TB
メモリ 8GB/16GB/32GB
NVIDIA GeForce GTX 1650Ti Max-Q(オプション)
USB-C×1、Thunderbolt 3(USB-C)×2
フルサイズSDカードリーダー
タッチ非対応 1.83kg〜, タッチ対応 2.05kg〜
Windows 10 Home/Windows 10 Pro
199,980円から
国内発売済み

ベゼルレスデザインがトレンドを築くまで

ベゼルレス化に対してメーカーが強いこだわりを持つようになったきっかけは、2007年にスティーブ・ジョブズがお披露目した最初の「iPhone」だという人がいます。初代iPhoneは3.5インチのタッチスクリーンが分厚いフレームに覆われた長方形の筐体と画面下部のホームボタンを特徴とし、その後のスマートフォンのプロダクトデザインを形作る象徴的な端末になりました。

スマートフォンという新たなカテゴリーは、生まれたその時から本質的な制約に縛られています。私たちの手が今以上大きくならない限り、その手に握られるスマートフォンの巨大化にも限界があるのです。「限られたサイズの中でいかに画面を大きくするか」。このような大きな壁に対して各メーカーが取り組んできた歴史の最前線に、ベゼルレス化という一つのトレンドがあります。

Samsung Galaxy S8

テレビ分野で早くからベゼルレスに取り組んできたサムスンは、2017年に「Galaxy S8」を発売しました。左右のベゼルをほぼ完全に無くし、同時に必要なセンサー類を限りなく小さいスペースに納めることで上下に拡大したフロントスクリーンは当時衝撃を持って受け入れられたGalaxy S8の特徴であり、トレンドの立役者としても知られる存在です。

これに対しアップルは「iPhone X」でレガシーなホームボタンを取っ払うことにより、センサー類が詰まったノッチを残し筐体の端ギリギリまで画面を広げることに成功します。このアイコニックなノッチスタイルはファーウェイの「P20 Pro」などいくつかのフラッグシップスマホに受け継がれていくのでした。顔認証や画面内指紋認証、ひいては徐々に数を減らす筐体側面のボタンでさえ、開発の背景には「スクリーンを限界まで押し広げる」という命題が横たわっています。

いずれにせよ、スマートフォンのシェア1位〜3位を占める主要メーカーがベゼルの消失を主力としたことで、スマートフォンの「ベゼルレス化」が一大トレンドとしてその地位を築いたのは確かです。そこには見た目の美しさを追求するだけに留まらない、より核心的な意味合いが秘められているように思われます。


テクノロジーと現実世界の調和

当時ディスプレイの分野において一歩先を行っていたのが、テレビ業界です。シャープが2010年に発表したベゼル2.4mm(当時世界最薄)の60インチテレビは、ディスプレイの高解像度化に縛られないイノベーションの新たな可能性を示しました。サムスンやソニー、他多くのメーカーが参入したテレビのベゼルレス競争は10年代を象徴するイベントとして記憶に刻まれています。

SHARP PN-V601

そこにあったのは美的感覚に基づくデザイン的側面だけではありません。現実世界とディスプレイを区切る「境界線」であったベゼルが徐々に薄くなるにつれ、デバイスそのものが私たちの日々の暮らしに違和感なく溶け込むようになったのです。

コンシューマー向けのPCが登場した時から、デジタル機器は常に私たちの実生活から少し離れたところにありました。「PCを開くために机に向かう」「テレビを見るためにソファーとテレビ台を用意する」という考え方はいずれもデバイスありきで、デバイスを使うために私たちがライフスタイルを変化させた歴史の象徴です。分厚いベゼルは、そこに電子機器、デバイスがあると私たちに認識させる象徴的なパーツの一つでした。その消失が意味するのは、ディスプレイと現実世界の視覚的な融合であり、これまで距離のあったテクノロジーと実生活をゼロ距離で調和させることです。

パソコンや音楽プレーヤーを持つ人は「機械オタク」と見做されていた2000年代前後の日本を鑑みれば、スマートフォンやタブレット、ラップトップが生活の中で自然に共存している現代はテクノロジーのそうした側面を反映した結果といえるかもしれません。そして今後、こうしたデバイスがますます生活に不可欠な日用品となる上で「ベゼルレス」はデザイントレンド以上の重要な意味を帯びてくるのです。

3面狭額縁のベゼルレスデザインで業界に衝撃を与えたXPS 13(2015)

狭額縁はXPSの代名詞

ベゼルレス化の波はラップトップの分野にも押し寄せていました。第2世代MacBook Air(2010)や初代 ZenBook(2010)が開拓した「ウルトラブック」の系譜が今に続くように、筐体の小型化・軽量化は2010年代の薄型ラップトップにとって重要な課題の一つだったのです。そこでディスプレイに活路を見出したデルは、同分野に豊富なリソースをもつシャープと手を組んで狭額縁PCの元祖たる「XPS 13」(2015)を世に送り出します。

当時分厚いベゼルが当たり前だったラップトップ業界にとってテレビで培われたベゼルレスデザインの導入はきわめて革新的であり、狭額縁のディスプレイはXPSの系譜を語る上で欠かせない要素となりました。デルのXPSブランド、シニアディレクターのDonnie Oliphant氏はEngadgetのインタビューに対し次のように答えています。

彼ら(シャープ)はDellと一緒に開発すれば、PCの新たなスタイルを生み出せると考えていました。そうして我々の機構設計や電気回路設計の専門家、それにシャープのエンジニアリングスキルと技術が融合し、白紙のキャンバスが満たされました。最初のInfinityEdgeが誕生したのです。

InfinityEdgeテクノロジーの実現にはシャープのIGZO技術が深く関係していたといいます。IGZOは液晶ディスプレイに使用されるアモルファスのシリコン素材に目をつけることで、ディスプレイの消費電力を効率化するとともに、解像度の向上に大きく貢献しました。消費電力の削減と画素密度の向上があってはじめて、ディスプレイを拡大しベゼルをより細くする設計が技術的に可能となりました。


XPS 13の2015年モデルは「3面狭額縁」を具現化した最初のラップトップで、2013年のモデルに比べて半分以下の左右ベゼル5.2mmを実現しました。そして2019年には現在のXPSラインナップに繋がる4面狭額縁とアルミニウムボディを採用した「XPS 13 2 in 1」が登場し、翌年のXPS 13(2020)ではついに画面下部のベゼルをほとんど取り除くことに成功します。

ラップトップ市場の歴史においてXPSシリーズとInfinity Edgeテクノロジーは一つのパラダイムシフトを起こしました。現在ではASUSの「ZenBook」やHPの「Spectre」などベゼルレスを打ち出すPCが多数存在するわけですが、これら競合他社の取り組みも元は2015年の「XPSショック」に端を発しています。アップルの16インチMacBookProでトピックになった狭額縁化でさえ、この大きなトレンドと期待に沿うものでした。

4面ベゼルレスをシリーズで初めて実現したXPS 13 2-in-1(2019)

15インチにもボーダーレスの風潮

5年ぶりにフルモデルチェンジを果たした新しい「XPS 15」(2020)には、XPS 13(2020)で評価を受けた4面狭額縁とアルミニウムデザインがそのまま受け継がれています。16:10で15.6インチという画面サイズながら前モデルに比べて大幅な小型化を実現した筐体からは、ベゼルの削減による設計上のメリットを実感できるでしょう。

ここ20年、ラップトップの内部性能は驚くべき進化を遂げてきました。ところがハードデザインに目を向けると、その変化はわずかなものです。筐体は薄く軽くなったけれど、ディスプレイ・キーボード・トラックパッドの基本構成と配置は昔から変わっていません。この問題はウルトラブックの技術革新が飽和しつつある現状を照らしています。

ならば、技術的なブレイクスルーが起きない限り「ベゼルレス化」はラップトップ設計に残された数少ない開拓分野の一つになるはずです。ベゼルの消失はデバイスと私たちの生活の高度な融合、すなわち私たちにとって端末がもっと身近な存在になることを意味し、スクリーンの拡大は動画・写真の表示領域を広げ一度にできるタスク量を格段に増やしてくれます。

2012年CESのデルブースで当時11型のMacBook AirとXPS 13が並べて展示された事実が示すように、13インチXPSは「11型に13型の機能を詰め込む」という設計思想のもとに進化を続けてきました。今そのメインストリームは15インチにも導入され、いわば「13型に15型を」の壮大なテーマは、2020年モデルで概ね達成されたように思われます。

XPS 15(2019)とXPS 15(2020)の比較。4面狭額縁により筐体の大幅な小型化に成功した

実際、XPS 15の新旧モデルを並べた時に、どちらが新しい方かはすぐに見分けることができるでしょう。サイズの違いはもちろんのこと、スタイリッシュな4面狭額縁、シャープ製の高解像度ディスプレイ、標準配列のフルサイズキーボード、極限まで拡大されたトラックパッド、SDカードリーダーに両側計3基のUSB-Cポート、指紋認証と顔認証、そしてアルミ削り出しの高級感漂うボディー。全てのパーツが出来うる限りに洗練されたXPS 15(2020)は、現時点でラップトップが成し得る最善を詰め込んだ「完成形」のデバイスとして私達コンシューマーの期待に応えてくれるのです。

XPSとプロダクトデザインの未来

新しいXPS 15には他にも魅力的な特徴がたくさんある訳ですが、とりわけディスプレイに注目して話を進める背景にはその「プロダクトデザイン」にこそXPSブランドの本質を見出すことができるからという僕の考えがあります。

180度全画面を実現したXiaomi Mi MIX Alpha

より私たちの身近に存在し生活に溶け込んだデバイスの創造は次世代テクノロジーにおける大きなテーマの一つです。スマートフォンはこの点において一歩先を行っていて、AQUOS CRYSTAL(2014)やGalaxy S8(2017)に始まったベゼルレス化の系譜はシャオミの全画面スマホ「Mi MIX Alpha」やファーウェイ「Mate X」のようなフォルダブルスマホの登場により新たなステージへと駒を進めています。

一方で、ラップトップ分野はここ10年でこれといった技術的進歩を経験してきませんでした。XPS 15(2020)は現時点でラップトップに成し得る最善を詰め込んだデバイスであると評しましたが、ノートブックという業界全体の行末を考えたときに、従来のハードデザインを覆すブレイクスルーが求められるのもまた事実です。

XPS 13(2020)の記事で述べたように、革新を追い求めるフロンティア精神の対極に位置するのがデルの企業的性質である以上、自らが技術革新の担い手となる可能性は低いのかもしれません。とはいえ、これだけ洗練されたプロダクトを世に放てる実力をもったデルだからこそ、ラップトップ業界に新たなパラダイムシフトを起こせるんじゃないか、と期待してしまう側面もあるのです。そんな希望を抱かせてくれる程に、XPS 15(2020)は十分なインパクトをもった製品であると思います。

XPS 15(2020)

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